魅力1
製造物流IT小売りの一貫企業

 ニトリという企業の最大の優位性であり魅力は、もはや小売業ではないということです。それが直近の決算からよくわかります。

「お値段以上」を謳うニトリですが、昨今の円安はニトリにとっても大いに打撃だったはずです。中国で生産して日本で販売するビジネスモデルでは超円安になると仕入れコストが大幅に上昇します。

 実際、ニトリの場合も直近の決算で、長く続いた増収増益は途切れて減収減益となりました。売上高は前年比で▲522億円減、経常利益は同▲117億円の減少です。ところが面白いことに、円安の影響は決算時点ですでに克服していたのです。

 ニトリによる減益の影響分析によれば、為替の影響が▲380億円ありました。しかし、実は原価低減と貿易費用の低減、物流経費の低減の3項目で+509億円と円安コスト増の打撃を経営努力で大幅に取り返しているのです。

 今期のニトリの減収減益は為替以上に国内店舗の売り上げ減少が原因としては重要で、推察するにその背景原因は店舗数の飽和にあるようです。

 その飽和の話は後で別途解説するとして、ニトリがどうやってこの超円安を克服したのかを見ると、そのメカニズムがとてもユニークであることがわかります。

 たとえばニトリは円安対策が叫ばれる前に中国からベトナムに生産拠点を移しています。そして新しい工場ではたとえばベッドを生産する際に、マットレスに使うウレタンを液体状態の原料から自社で生産します。カーテンは布地を仕入れるのではなく自社工場で糸から布を織っています。

 これは小売業としては異形のビジネスモデルです。

 一般に昔ながらの小売業は販売する商品をメーカーから卸を通じて仕入れます。大手スーパーはこの卸を中抜きして直接仕入れることでコストを劇的に下げました。ユニクロは中国で衣料品を自社縫製することでさらにコストを下げます。これが従来型の小売業のビジネスモデルの進化の説明です。

 ところがニトリはさらに上流である原料のウレタンや布地を生産するところから着手します。理由は一貫して生産すれば、自社のビジネスモデルの中でコストを削減させられる部分がそれだけ増えるからです。

 これと同じ発想でニトリは物流を自社のビジネスモデルに取り込みます。たとえばマットレスは工場に圧縮機を導入することで製造時に厚みを5分の1に減らします。すると製造コストは増えますがコンテナ内の積載効率や物流センター内の庫内保管効率が上がります。

 物流センターから店舗に対しても自社物流がビジネスモデルの前提になっていることで店舗への搬入コストが下がり、店舗での欠品による機会損失も下がります。同じ発想でニトリではITも自前です。

 これは就活学生にとっても魅力です。入社後に配属される部署がどこであれ、他社がやっていないビジネスモデルのイノベーションを体験できることになります。最近の新卒学生は、何社かの転職を経て目標とするキャリアに到達することを考える人が多いのですが、キャリアステップという観点でもニトリでの社員経験からは大きなキャリア価値が得られるのです。