【1分読み切り】「時間、労力、お金をかけたんだから……」と引くに引けなくなる状況は少なくありません。そんなときどう考えたらいいのでしょうか?
誰しも悩みや不安は尽きないもの。寝る前にイヤなことを思い出して、眠れなくなるなんてことも……。そんなときの助けになるのが、『精神科医Tomyが教える 50代を上手に生きる言葉』(ダイヤモンド社)。ゲイのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症……苦しんだ末にたどり着いた、自分らしさに裏づけられた説得力ある言葉。心が落ち込んだとき、そっと優しい言葉を授けてくれる“言葉の精神安定剤”で、気分はスッキリ、今日一日がラクになります!

【精神科医が教える】これまで費やしてきた時間や労力が惜しくて、同じことを続けてしまう人の心理Photo: Adobe Stock

諦めが早いのはダメなこと?

今日のテーマは、「諦めること」についてお話ししたいと思います。

一般的に、諦めの早い人は根性も根気もないといったネガティブなイメージを抱かれがちです。たしかに粘り強く取り組むことも大切な視点ですが、諦めが早いことの利点を軽視してはいけません。

諦めの早いということは、気持ちの切り替えが早いともいえます。そのため、次の目標に素早く移れるという利点があります。つまり、時間や労力を無駄にせず、効率的に行動できるというわけです。

諦めが悪い人の心理とは?

一方で、諦めの悪い人は、ややもすると時間や労力をムダに費やしてしまうリスクがあります。なかなか克服しにくいのが、サンクコスト(回収できない埋没費用)の誤謬(ごびゅう)なのです。

これまで費やしてきた時間や労力、お金が惜しくて、同じことを続けてしまう心理を「サンクコスト効果」と呼び、経済学では過去の投資などを将来の経営判断に加味すべきでないとされています。

しかし、実際には会社も個人も、「時間も労力もお金もかけたんだから」と引くに引けなくなる心理に陥ることは少なくありません。

目に見えない
大きな機会損失

ただし、諦めの悪い人は、粘り強く取り組むことで、自分の信念や価値観を貫くという利点もあります。小さなことでも譲れないこだわりがあれば、最終的に自分の納得のいく成果を得る可能性もあります。

とはいえ、そうした取り組みが行き過ぎると、結果として時間と労力、お金のムダ遣いになるリスクを抱えているのです。

その時間と労力で、もっと自分のやりたいことに集中できたかもしれないとなると、目に見えないながらも大きな機会損失にもつながります。

唯一絶対的な
正解はないからこそ

諦めが早いか悪いかは、白か黒か、イエスかノーかという二元論的に判断するのではなく、結局は状況に応じてバランスをとるのが大切です。

仕事もプライベートも、学校のテストのように唯一絶対的な正解が用意されているわけではありません。正解はないともいえます。

時間と労力、お金は限られていますから、自分にとって本当に大切なことに集中できるよう、そのときに自分が持っているリソース(時間・労力・お金)をもとに、柔軟に判断していくことが重要ですね。