「ダメな管理職は部下に『積極的になれ』と言う」
そう語るのは、これまで4400社以上の導入実績があるマネジメント法「識学」の代表を務める安藤広大氏だ。著書『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』シリーズ三部作は、「会社員人生が楽になった」「本音ばかりが書いてある」と話題になっている。部下の育成や日々の管理業務などで悩むリーダーたちに「判断軸」を授けている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、注目のビジネススキルを解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

ダメな管理職は部下に「積極的になれ」と言う。じゃあ、いい管理職は何と言う?Photo: Adobe Stock

メリットがあるから「人とつながる」

 あなたの会社では、「積極的になれ!」という言葉が飛び交っていないでしょうか。

 部署を横断して何かに取り組むときを思い描いてください。

 これは、あるメーカー企業の営業の話です。
 自分の部署の商品を扱うのは、当然のことです。
 ただ、その営業先で他部署が扱う商品が売れそうなときがあります。
 そのときに、次のような2つの考えが浮かぶはずです。

「自分には何のメリットもないから、まあいいか」
「いや、会社全体の売上につながるから、やったほうがいい」

 そういう葛藤です。
 そのときに、必ず後者の考えを採用し、他部署に紹介してつなげているそうです。
 なぜなら、その後、商談が成立したら、最初に紹介した人に評価が与えられるからです。
 仕組みがあるから、人は動き、部署を超えてつながるのです

 もし、これが精神論によって、

「自分の会社の商品にはすべて詳しくなるべきだ」
「部署を横断してコミュニケーションをとりなさい」
「愛社精神があればできるはずだ」

 などと言われても、主体性がある一部の人しか動かないでしょう。
 仕組みがあり、メリットがあるから、人は動くのです。

いい管理職ができることとは?

 そもそも部署に分かれていることを疑問視する人もいます。
 しかし、部署が分かれて自分の役割が明確になるから、仕事に集中できるのです。
 タテ割りが基本です。そこでよくない問題が起こっているなら、横断する仕組みで解決するしかありません

 部署を超えて新プロジェクトが起こる場合も同じです。
 そこでの責任者を新しく立て、新たなピラミッド組織の形をとります。
 構造は、同じです。フラットな状態のほうがスピードが速くなりそうな錯覚がありますが、実際は違います。
 うまく動ける一部の人にとって進めやすくなるだけです。

 本当に大事なのは、どんな人も生かすことです。
 そのために、組織としての仕組みを整え、動けるようにするのです。

「いい人」だからやるわけではない
「積極性がある」からやるわけではない

 ダメな管理職は、「積極的になれ」「主体的になろう」ということを言ってしまいます
 しかし、それでは何も動きません。

 動かざるを得ないようにするため、「ルールを変えます」「仕組みを作ります」ということを言い出せるかどうか。
 いい管理職は、それをやり続けるのです。

(本稿は、『リーダーの仮面』の著者・安藤広大氏が特別に書き下ろしたものです)

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2024年9月現在、約4400社の導入実績がある。主な著書にシリーズ累計150万部を突破した『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』(いずれもダイヤモンド社)がある。