期待値が高すぎるからこそ
人は失望を味わってしまう

 ところがこれまで説明したとおり、不安そのものはなくせる感情でもないし、不安や疲労の第2~第3段階になってくると不安感情が非常に強化されてしまうので、改善しようと思ってもまったく改善できない状況になります。

※文中に登場する疲労の3段階について
■疲労の第1段階=通常疲労レベル
■疲労の第2段階=疲労が蓄積され不安が2倍に
■疲労の第3段階=疲労も不安も3倍モード
図表2:不安とリンクする疲労の3段階同書より転載
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 そうなると努力すればするほど自己卑下してしまうという、「闇堕ちサイクル」が始まってしまうのです。

 これから、実際に不安がりやを改善するいくつかの方法論を紹介していきますが、不安などの感情をゆるめるエクササイズをしたときに、どれぐらいの努力で変化できるのかについて、まずは現実的な目安を持ってもらいたいと思います。

 たとえば、大谷翔平が2023年シーズン終了直前に肘の手術をしましたが、彼のファンが、もし手術をした直後、1週間で大谷が投げられると思っていたら、そうでない現実に直面したとき、大きく失望するでしょう。ファンがきちんと適正な時間を予想できていれば、2年後のシーズンに二刀流で復活することを期待して、ゆったりした気持ちで応援しつづけられるのです。

 結論から紹介しておきましょう。私は価値観や期待値などが修正されたり、「プチ楽観主義」につながる「4つの慣れ」(編集部注/1・楽に慣れる、2・快感に慣れる、3・怠惰に慣れる、4・自分の感じ方を大切にすることに慣れる)が生じるには、深刻な体験で40回、ただその行動をおこなうだけの単純な経験(訓練)であれば400回はかかると思っています。

 エビデンスはさまざまな人の変化をサポートしてきた私の経験値です。

 私は防衛大学校出身の元自衛官ですが、防大に入校したとき、わずか1週間で「人を見たら反射的に敬礼ができるようになる」状態に変化した経験があります。私だけでなくすべての新入生が、です。