40回、400回の法則で
ゆっくり成長していこう

 防衛大学校では、上級生とすれ違うたびにきちんとした手順に基づいた敬礼をしなければなりません。これを間違うと、怖い上級生たちからその場で厳しく指導されるのです。

 しかも、その数が尋常ではない。食堂に向かうだけで何百人もの上級生とすれ違うのです。寮の廊下を通ってトイレに行くだけでも10名ぐらいの上級生に敬礼しなければなりません。敬礼を失敗して深刻な指導を受けた体験40回、ただ敬礼をするだけの経験400回は、ほんの数日で達成したのです。

 自衛隊ではさまざまな訓練を自分も体験し、そして指導してきましたが、この40回、400回の法則はかなり的を射たものと思っています。

 また、1万時間セオリーというのもあります。これも出どころは定かではないのですが、「あることを極めるためには1万時間が必要だ」という説です。高校生が毎日5時間、週末に8時間の猛特訓をしたら、3年でその6割強の時間になります。昔の運動部の強豪校レベルはそうでした。仕事なら、8時間労働で普通に働いて、4~5年で1万時間になるので、そこでようやく一人前になれるという計算です。

 私たちは何かを習得するときに、たとえば九九だったら数カ月必死でやればそれを覚えられることを知っています。そのイメージで自分の感性や性格、行動なども変えられる、変わっていくと思っているかもしれませんが、そうではないことをきちんと認識してください。

 理性や知識で変えられるところ、つまり覚えるだけの課題で、しかも不安や疲労の第1段階なら、そのような短期間である程度の変化を期待することができるでしょう。ところが不安がりやを改善しようとする課題を、特に第2~第3段階でつらくなったときにやろうとしても、まずは不可能。第1段階のときに、40回、400回を目指しましょう。