“ノールック投資”を提供できれば
 Win-Winの関係が築けるかもしれない

 構想を簡単にいえば、ウォルマート型のファイナンスビジネスの中で、決済と運用、広告だけをAIによって極大化するサービスを提供できれば、事業者も利用者もWin-Winの関係を築けます。

 それは、たとえばこんなイメージのサービスです。

 給与が振り込まれたらAIの判断で当面使うお金以外は全部、投資信託での運用に回す。ポイントも同じです。それで決済が発生しそうなたびにその運用残高を取り崩します。決済事業者ですから、決済が発生した後で投資信託を売却させて、数日後の決済時に回収するという後払いサービスも提供できるでしょう。

 つまり低所得層に“ノールック投資”を提供することで、これまで銀行口座で金利を生まずに滞留していた資金を、投資で金が金を稼ぐ状態にもっていく考え方です。

 これなら元手が増えますから利用者も助かりますし、決済サービスで儲ける事業者にとっては決済額も増えるということでWin-Winの形になるはずです。

 買い物に関してもGPSと連動して、より賢いクーポンの利用を促します。たとえばドラッグストアでなにげなく日用品を買おうとしたときに、決済前に「このクーポンを取得して利用してください」とスマホ画面に指示がでるイメージです。

 こうした消費行動は結構複雑で、やっている本人はどれだけお金を得したのか、たとえ金融リテラシーがあっても経済計算するのは難しいものです。ましてや金融リテラシーが低い消費者はこれまで漠然と「なんか得したんだろうな」ぐらいに思うしかなかったはずです。

 ところがAIならこれをきちんと計算してくれます。イメージとしてはアマゾンプライムの会員になるとアマゾンのサイトで「これまでに2万3521円得しました」みたいに示してくれますが、あのイメージです。

「PayPayでデジタル給与を受け取ってキャッシュレスで生活したことで今月は4800円得しました」
「楽天経済圏にいるあなたは、今月、合計で6850円も多くお金を使うことができました」
「今、ポイント運用であなたの財産は17万9000円に増えています。これは預金と同じように使うことができます」

 といった具合に、誰でもわかりやすい形で利用者がどれだけ儲かったかを表示できるのです。

 その一方で、変な金融商品では一切儲けず、あくまで決済手数料と広告収入の極大化だけでビジネスを広げていく。

 結果、低所得者層に対して持続可能な形でサービスを提供する最大の金融機関になることができるでしょう。

 そこまで考えると。今回のデジタル給与開始のニュースはなかなかに大きなビジネスチャンスについてのニュースだったということなのです。