JR東日本初代社長は人口減に危機感
「鉄道事業の将来はバラ色ではない」

 ところがバブル崩壊で状況は一変する。実現していたら巨大な負債になりえた上野駅ビル構想は地元の反対や用地、日照権の問題で進捗が遅れていたのが幸いしたが、既存事業への影響も小さくなかった。

 1994年度から1998年度の非運輸業は、連結営業収益は約6101億円から約6746億円、連結営業利益は約194億円から約404億円となった。初期に開発した店舗の利益率が上がった半面、新規事業の展開にブレーキがかかった営業収益の伸びは鈍化している。

 追い打ちをかけたのは1997年のアジア通貨危機に端を発する金融危機だが、その裏で人口減少社会への危機感が高まっていく。JR東日本初代社長の住田正二氏は1998年の著書『官の経営 民の経営』で、総人口が2008年をピークに減少し、2050年過ぎに1億人、2100年には7000万人を割るとした人口推計を引用し、「鉄道事業の将来はバラ色ではない」と述べる。

 その上で「鉄道事業の将来がバラ色ではないと言っても、それは直ぐ来年、再来年のことと言うわけではない。速くても30年、50年、恐らくもっと先の話である」としたうえで、「鉄道事業が効率的な経営を続けている間に、JR東日本は、本業としての総合生活サービス事業を育成して、もう一本の太い大黒柱を築き上げなければならない」と記している。