年金を繰下げ受給した場合

 老後資金を何もしない場合、新NISAで運用した場合を見てきました。

 ここでもうひとつ、とっておきの方法をシミュレーションしてみます。それは「年金の繰下げ受給+(繰下げ期間中=年金待機期間中)に老後資金を使う」です。繰下げ受給とは、年金の支給開始時期を遅らせることです。でも年金がなければ、年金の待機期間中は生活費が足りなくなって困ります。年金を繰り下げしている期間は、老後資金から取り崩して生活費に充てるという方法です。

 そんなことをしたら、老後資金が減って、老後の生活に困ってしまうのではないか、と心配になりますよね。でも、心配はいりません。

 論より証拠。前述した2つの世帯で、繰下げ受給をした場合を考えてみましょう。

・60歳夫婦世帯

 60歳から65歳までは給与と生活費が同じなので、老後資金を使う必要がありません。つまり、「収支のバランス」が合っているわけです。

 年金は70歳まで繰下げ受給をするとします。

 65歳から70歳までは、収入が給与の120万円だけです。老後資金の取り崩し額は、年260万円と大きくなります。70歳時点の預貯金は200万円に減ってしまいます。

 70歳から待ちに待った年金の受給を開始します。すると、年金が42%の増額になります。夫の年金額は284万円、妻の年金額は114万円、夫婦の合計は398万円です。

 年間の生活費は380万円ですので、毎年18万円の黒字になります。

 預貯金200万円という心許ない状態から、黒字への大変身。70歳以降のほうが、余裕のある暮らしができるわけです。

 この黒字分を貯蓄に回すと、90歳には預貯金額が578万円、そして100歳には758万円になるのです。