実際に、ずる賢く上手に立ち回る人や、強い後ろ盾を持つ人は問題行為をしても上手に逃げ切り、本当は何もしていない弱い立場の人が、場合によっては問題行為を引き起こした犯人であるかのように認識されて(人物誤認)不公平な扱いを受けてしまうこともある。

 また、今日では、いざとなれば、メールや電話の記録などが全て残っているから、会社内の派閥抗争などで、ある特定の人物や、その派閥のメンバーを失脚させたい場合に、そうした人物にまつわる全ての記録を洗いざらい調べ(最近は、いとも簡単に精査できる)、コンプライアンス違反ということで摘発することもたやすい。

 この場合も、経費の報告ミスなどに厳罰を適用するという形で、先述した2や3に当たる誤審――ルールの誤適用(ただし、特定人物を失脚させるための故意によるもの)、罰則の誤適用(やはり故意によるもの)、一貫性の欠如など――が行われるのである。

社員が“プレー”に集中できる場づくりのコツ
審判の仕事に学ぶ、マネジャーがすべきこと

 企業内の問題行為への処分については、本来なら、スポーツの審判と同じように、しっかりした判定技術を持ち、社員が問題行為を起こすことなくプレー(仕事)に集中できる人材と組織をつくらなくてはならない。

 そのためには、何をすればよいか。判定技術のほうは別の機会に譲るとして、ここでは仕事に集中できるための場づくりについて述べておきたい。

 これについては、日本サッカー協会元審判委員長の松崎康弘氏の著書『ポジティブ・レフェリング』(2014年、デコ刊)がとても参考になる。特に問題行為を起こした選手に対する教育的な対応は、会社の文脈に置き換えて上手に取り入れていきたい。