例えば、従業員の働き方を定めた基本ルールである就業規則は抽象度が高く、詳細は定められていない。具体的な行動規範(code of conduct)が細部にわたり規定されている会社はほとんどない。多くは「弾力的な運用」なのだ。これでは、判断のしようがない。

 また、何か問題行動と思しきことが起こった際の審判の立場にある人は誰なのか、これも定かでない。本社の監査部が出動するのはよほど大きな問題の場合だけだ。普通の問題行動に対しては、現場のマネジャーが情報を集めて判断する。

 しかし、そもそも彼らは推進者(プレーヤー)であり、審判ではない。ルールについての知識も不確かなことが多く、自分を含めた狭い範囲の自分の周囲のことで頭がいっぱいで、そもそも他人の行動を注視していない。先ほどの例でいえば、「誤認」「ルールの適用ミス」が普通に起こり得る。

 次に、事件が発生したときの調査にも問題がある。誰も事件調査のトレーニングを受けていない。当たり前だが、VARの人が確認のために見るような検証可能な映像もない。極論すれば、ずさんに調査をして、ずさんに判断している。

派閥抗争で意図的に
ルールを誤適用することも

 過去の問題への判断(ある問題行為に対してなぜこのような懲戒処分が下ったか)に関する情報が明確に残されていないことがほとんどで、判断の揺れや一貫性の欠如だらけである。場当たり的で、場の空気に左右された処罰が日常的に行われ、結果として、組織内に不公平感が残りやすい。

 一般企業の組織では、そもそも(プロの)審判もおらず、情報も精査されず、素人がその場の雰囲気に従って判断し処分を下している。派閥抗争が影響を与える場合もある。誤審が頻発している可能性は極めて高く、それを近くで見ている人は大きな不満を持つことになる。