「自力整体」とは、整体プロの技法を自分におこなう人気メソッドです。現在1万5000人が実践中。「久しぶりにぐっすり眠れた!」「10年間苦しんできた慢性痛から解放された!」「健康的にダイエットできた!」と絶賛の声が続々。「3分以内でできる悩み解決ワーク」を集めた著書『すぐできる自力整体』も好評。著者の矢上真理恵さんは、「不調のほとんどは自力整体で解消できる」と語ります。今回は、認知症の予防に役立つ自力整体をお届けします。
監修:矢上 裕 矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
(写真/榊智朗 構成/依田則子)
認知症にならないために、今できること
「2040年、認知症の患者数は高齢者の6.7人に1人。約15%を占める数字です……」
こんなニュースが流れると、「自分は大丈夫だろうか……」と漠然とした不安を抱える方は多いのではないでしょうか(厚生労働省研究班の調査 2024年5月8日)。
ご高齢の生徒さんの多い私の父(矢上裕)が指導する教室も、認知症の不安解消で訪れる方が増えています。父はいつも「自力整体は予防に役立つので、安心して生きましょうよ!」と生徒さんをはげましています。
自力整体の考案者である父はまだ71歳、「認知症にならずに生ききった」という体験者ではありませんが、自力整体の教室に通い続け、認知症にならずに天寿を全うされたご高齢の方を40年ちかく見てきました。
その関わってくださった生徒さんの体験から得た仮説、そして東洋医学の視点から、認知症を発症されやすい方、されない方には、大きな違いがあると父は実感していると言います。その違いがわかれば予防できるということです。
世間では一般的に、予防法として運動・人との交流・知的刺激などが提言されています。
そこに、さらに自力整体の視点で加えるなら、次の「3つ」も大切な要素だと考えます。
認知症にならなかった人の「3つの特徴」
中高年世代の方で、認知機能の低下やなんらかの不調を抱えやすい方は、次の3つが気になります。
1.体内の水分不足:水分補給不足、水分を保管する筋力の低下
2.血のめぐりが悪い:悪い姿勢、運動不足による血行不良、冷え性など
3.体が硬い:関節や筋肉が硬い、緊張している
一方、いくつになってもお元気で、認知症なしに天寿を全うされた、ご高齢の生徒さんたちの特徴は次のとおりです。
1.体内の水分を保っている
2.血のめぐりが良い
3.体が柔らかい
1.水分を保っている
ご高齢の生徒さんで、いつまでも若く、気力・体力にあふれている方の特徴はこうです。肌がツヤツヤしている、筋肉が柔らかく骨密度が高い、感情が柔軟で頭脳明晰、歯が丈夫、嗅覚・味覚が衰えずグルメ、毛髪が太い、色気がある、感受性が高く感動しやすい、まめによく動く。これらは体内水分量が正常で、東洋医学で言うところの「気」が充実している状態です。「適切な水分補給」と「水分を保管する筋肉量の維持(運動)」を心がけることが大切です。
2.血のめぐりが良い
「整体」から見た認知症予備軍になりそうな方の特徴は「悪い姿勢」です。猫背で胴体の真上に頭が乗っていません。胴体の前に頭があるので、つねに首はコリ続け、脳や目の血流を阻んでいます。この姿勢のまま運動や食生活の改善、サプリなどを飲んだとしても、認知症の予防は期待できないかもしれません。自力整体で骨格の調整をおこなえば、胴体の真上に頭が乗るようになり血流改善、脳の血のめぐりも良くなるはずです。
3.体が柔らかい
「1.水分を保っている」「2.血のめぐりが良い」という人の特徴は、関節や筋肉に硬さがなく、柔らかくて温かい体です。生まれつき体が硬い方も、関節や筋肉を刺激したり、ほぐしたりする習慣で、かならず柔らかくなります。そこで手軽なのが自力整体の3つのメニュー。「歯磨き中にかかとをトントン上げ下ろし」「テレビを見ながら『そんきょ』の姿勢でバウンド(※ワークは後半で紹介)」「寝る前に20分ほど自力整体」の構成です。筋肉や関節はほぐれ、水分や血のめぐりはよくなります。
これらの3つを基本におさえておけば、気力・体力も満ちていきます。
次ページで、水分の循環・血流改善に役立つ「足首の血流を促す」ワークをご紹介しましょう。冷え・むくみ解消にもおすすめです。
矢上予防医学研究所ディレクター
1984年、兵庫県生まれ。高校卒業後単身渡米、芸術大学プラット・インスティテュートで衣装デザインを学び、ニューヨークにて独立。成功を夢見みて、徹夜は当たり前、寝るのはソファの上といった多忙な生活を続けた結果、心身のバランスをくずし動けなくなる。そのとき、父・矢上裕が考案し約1万5000名が実践している「自力整体」を本格的に学び、心身の健康を取り戻し、その魅力を再発見。その後、自力整体ナビゲーターとして、カナダ、ヨーロッパ各地、イスラエルにて、クラスとワークショップを開催。さらに英国の名門セントラル・セント・マーチンズ大学院で「身体」をより体系的に学び、2019年に帰国。現在、国内外の人たちに自力整体を伝えながら、女性のための予防医学をライフワークにしている。著書に、『すごい自力整体』(ダイヤモンド社)がある。
監修者:矢上 裕(やがみ・ゆう)写真右
矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
1953年、鹿児島県生まれ。関西学院大学在学中の2年生のとき、予防医学の重要性に目覚め、東洋医学を学ぶため大学を中退。鍼灸師・整体治療家として活躍するかたわら、効果の高い施術を自分でできるように研究・改良を重ね「自力整体」を完成。兵庫県西宮市で教室を開講、書籍の出版やメディア出演などで注目され、全国から不調を抱える人々が続々と訪れるようになる。現在約500名の指導者のもと、約1万5000名が学んでいる。著書に『自力整体の真髄』『はじめての自力整体』(ともに新星出版社)など多数。遠隔地の人のために、オンライン授業と通信教育もおこなう。 写真/榊智朗