芸能人や著名な経営者にも「サウナ好き」を公言する方が増え、また身近なビジネスパーソンで、精力的に仕事をこなすトップエリートと呼ばれる男女がこぞってサウナに通っています。なぜ、仕事ができる人は、サウナにハマるのでしょうか?
サウナを初めて科学的エビデンスに基づいて解説した話題の書「医者が教えるサウナの教科書」(加藤容崇著)より、最新研究に基づいたサウナの脳と体に与える効果と、最高に「ととのう」ための入り方を、本書から抜粋して紹介していきます。

【医者が教える!】「決断力」と「集中力」をアップするためのとっておきの方法Photo: Adobe Stock

心身をサウナでととのえると、脳と体に起こること

次から次へと急ぎの案件が舞い込むビジネスパーソンには、スピーディな意思決定が求められます。また、それを支える集中力も必要でしょう。そこで、私が行った興味深い研究結果を紹介します。

サウナに入る前と後の脳について、20名を対象に、MEGを用いて測定を行いました。MEGというのは、脳内にわずかに発生する磁場変化を捉える機器で、簡単に言うと「脳の働き」を調べるものです。脳の様子を調べる機器としてはfMRI(ファンクショナルMRI)が有名かもしれません。しかし、これは血流を測定するものなので、電気的活動がメインの脳の機能を直接見るわけではありません。それに対してMEGは、防磁室の中に入って、200以上のセンサーを用いて頭部全体の電気的活動の結果生じる磁力を計測して、脳のどの部分が、いつ、どの程度の強さで働いたのかを高精度に測定することができます。

そして、そのMEGを用いて検査を行ったところ、驚くべきことが判明しました。

サウナに入った後は、被験者全員のα波が「正常化」していたのです。

サウナに入るとα波が正常化する

α波というのは、リラックスしている時に出る脳波のため、「出れば出るほどいい!」と思いがちですが、実はそうではありません。大切なのは「正常なα波」を出すことです。

そもそも、脳波というものは、周波数(1秒間に繰り返した波の数)によって分類されており、Hz(ヘルツ)という単位で表されます。そして、α波は8~13Hzに属するもののことを言います。しかしながら、「8Hzならα波だからいいんだ」「13Hzならいいんだ」というわけではありません。
たしかに、どちらもα波の範囲内ではありますが、本来、正常なα波の平均値というのは、10Hzくらいです。だから、10から外れすぎてはダメなのです。8に行ってもダメだし、13に行ってもダメ。認知症の人はこの周波数が10Hzよりも低下します。

また、振幅(周波数が波の数であるのに対して、振幅は波の高さ)が、適切な範囲内であることが、脳にとって最もよいこともわかっています。

そして、今回の研究によって、サウナに入った後はα波が正常化する、すなわち、周波数も振幅も、適切な範囲内に正されることがわかったのです。

ワーキングメモリーが向上し、仕事が速くなる

α波が正常化すると、認知機能(ワーキングメモリー)や集中力の向上につながることが報告されています。

ワーキングメモリーというのは、情報を一定期間保持し、同時に処理する能力のことで、作業机にたとえられることがよくあります。ワーキングメモリーの容量が大きい=作業机が広いということです。仕事をする時に、デスクは広いほうが作業をしやすいと思います。狭いデスクだと、必要なものをすべて並べておくことができないため、いちいち引き出しから出し入れしなくてはいけません。その分、時間がかかるので非効率的です。

反対に、デスクが広ければ、必要なものやコトを並べておけるため、ぱっと見て状況をつかめます。何から着手すればいいかという優先順位をつけやすいので、決断力も上がります。α波を正常化することで、ここぞという時に集中したり、意思決定をスピーディにできるようになることは、仕事のパフォーマンスを上げる大きな武器になることでしょう。

*本記事は、「医者が教えるサウナの教科書」から、抜粋・編集したものです。