「子どもがいない人は無理がきく」
過去に職場で感じた理不尽
過去には、子どもを持たないことで、職場で理不尽な思いをしたこともある。
30代半ば、訪問介護の事務所で事務を担当していた時、業務量が一気に増えたことがあった。月末と月初に、手計算で複雑な勤怠管理の仕事を受け持っており、同時並行で訪問介護の介護請求の仕事も担当していた。ある時女性上司が風邪で休み、1人で彼女の分の業務も頑張ってこなしてしまったことをきっかけに、本来は彼女と2人で回すことになっていた仕事のほとんどを押しつけられるようになった。
それに加え、別のセクションの夜間業務の責任者が妊娠して産休に入ることになり、彼女が担っていた業務を「あなた、できる?」と上司が軽く言ってきたのだ。産休を取る人のフォローを「無理です」などと断ってはいけないという思いがあり、引き受けた。
同性である女性の上司から「あなたならやれるはず」と言われたことにもどこかで傷ついていた。
「業務量もさることながら、内容が多岐にわたることになりました。3種類の介護請求はそれぞれルールやシステムが異なり、とても複雑な仕事をこなさなくてはなくなり、残業時間も増えて……」
追加業務を1人でカバーし、かなりの負担を背負ったが、給与に反映されることはまったくなかった。疲労困憊し、上司に言ってもらちがあかないため、本社に伝えて仕事を分散してもらったが、精神的にきつくなり結果的に仕事を辞めた。
「子どもがいない人は無理がきくんだと思われ、当然のようにフォローを頼まれている人もいると思います。妊娠や出産、小さい子どもに関わる問題が持ち上がった時、女性同士で解決するものとされている職場はまだまだあるのではないでしょうか。子育てそのものはもちろん、職場の問題にももっと男性を巻きこむべきだと思います」
昨今は企業でも、産休や育休での欠員に対するフォロー体制の構築が整備されてきている。ケイコさんのような不利益を被る人が出ないよう、それぞれが相手の立場に立って物事を考えられるような職場環境づくりは社会全体の重要課題だといえる。