まずは声に出す
まずは「コミュニケーションコスト」「事務コスト」の存在を認知させよう。
これらのコストに無頓着な人たちは、そもそもコミュニケーションや事務間接業務にも見えない労力や損失が発生していることに気づいていない、あるいは想像が及んでいない可能性が高い。
煩雑なコミュニケーションには見えないコストがかかる。事務手続きはタダではない。それらが中の人と外の人、双方の機会損失を生んでいる。まずはその認知向上を図ろう。
ポジティブに伝えるなら「お互いのコミュニケーションコストを下げるために」「事務コストを下げたいので」など前置きして、スリムなやり方を提案するとよい。
作業や慣習の目的を疑う
その作業や慣習の目的を疑って、指示してきた相手に問うてみよう。
コミュニケーションコストや事務コストに敏感な組織は、当たり前の仕事や慣習であっても率先して声を上げ、存在そのものを疑うことができる。そしてときに業務やプロセスそのものをなくすなど、やり方やルールを柔軟に変えていける。
「この会議、意味があるんですか?」
「日報の慣習やめませんか? 全員に毎日作文させる必要あるんですか?」
「この手続き、なくてもいいのでは?」
「わざわざメールでやり取りしなくても、チャットで事足りるのでは?」
目的を認識することで、「その手段に固執することに意味はない」と、お互い我に返る。
つらさを訴える
とはいえ目的を問われるとイラっとしたり、思考停止してしまう人たちもいる。
その場合は素直につらさを訴えてみよう。
「コミュニケーションに時間と労力がかかりすぎて、正直つらいです」
「事務手続きが煩雑すぎて、心が折れそうです」
「時間や人のリソースを割けないため、簡易な方法でお願いしたいです」
「メンバーの残業が増えてしまって……ご協力をお願いしたいです」
相手の共感を促すためには、事情や感情をストレートに伝えることも大事なのだ。
自ら効率のよいやり方を率先する
あるいは何も言わず、あなたが率先して合理的なやり方でスマートに行動する。
たとえば相手から「ミーティングをお願いします」と言われたら、さも当然のようにオンラインミーティングのURLを発行して連絡する。メールではなくチャットで連絡を返す。
筆者(および当社)も、たとえば「請求書を月末までに郵送してください」などの顧客からのメッセージに対し、何も言わずにPDFの請求書をメールやメッセンジャーに添付して返している。何ら揉めることなく「ありがとうございました」で終わるケースも多い。
相手はただ単に、今までの慣習で従来のやり方(ここでは郵送)を指定しているだけの場合もある。自分主導で、黙って相手をスマートなやり方に引き込み、何か言われたときに対話と議論をすればよい
・「コミュニケーションコスト」「事務コスト」を声に出して意識づける
・何も言わず、スマートなやり方を淡々と実践してみる
(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。