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それぞれの潜在的な競争相手

 ソニーもシャープも、既存の自動車メーカーのコンセプトとは違う視点で、未来のモビリティのブルーオーシャン的な領域を狙っているように思えます。

 しかしそのブルーオーシャンにはそれぞれ異なる競争相手がいそうです。さらに、それぞれの競争相手は自動車メーカーではなさそうです。

 ソニーが目指す車内の感動空間は大手自動車メーカーの中では独自性がありますが、中国の新興EVメーカーは同じ方向で競っています。

 同時にコンテンツプロバイダーも同じ方向での車内体験向上を目指しています。たとえば私が所有するBYDのコンパクトカーには音楽配信のSpotifyが標準装備されています。

 EVで「運転をしながらコンテンツを楽しむ」という制約があるうちは動画ではなく音楽コンテンツ中心のサービスに頼ることになり、その観点での競争ではソニーと競合には差がつきにくいという制約を感じます。

 これが自動運転のレベルが進んだ場合、たとえばレベル4になって基本的にドライバーに運転手としての責任が生じなくなった未来では、車内でドライバーが映像コンテンツを楽しむようになります。その未来は意外と近いかもしれません。

 その場合には実はソニーのアフィーラよりも、シャープの試作車のように65インチのテレビを車内に搭載して、利用者が後ろ向きに座るような車の方が、優れたエンタメ体験を受けられるようになるかもしれません。

 だったらソニーも65インチを搭載すればいいと思うかもしれませんが、進化はそこで止まらない可能性もあります。車の車内で本格的な感動体験を想定するのであれば、大画面テレビよりもアップルビジョンプロのようなヘッドセット型のハードウェアを装着したほうがよりイマーシブの度合いは高くなります。

 そして、そのような未来になると車の車種は何でもよくなってしまいます。

 要するに来たるべき自動運転の時代になると、感動体験は車内でも、自宅でも、場合によっては飲食店の席に座っていても同じようにGAFAMから提供されるかもしれないのです。

 このようにソニーが目指す方向では、結局のところコンテンツプロバイダーが未来の本当の競争相手になるかもしれません。