「あなたの職場は、意思決定層が同じ属性の人だけになっていませんか?」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で、働き方改革、組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」には共通する時代遅れな文化や慣習があり、それらを見直していくことで組織全体の体質を変える必要があると気づきました。
その方法をまとめたのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』です。社員、取引先、お客様、あらゆる人を遠ざける「時代遅れな文化」を変えるためにできる、抽象論ではない「具体策が満載」だと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「意思決定層に多様性のない職場」の問題点について指摘します。
役員全員が「モノトナス(同一色)」な組織
「役員は全員男性。女性が一人もいない」
「役員は全員50代以上のシニア。服装は全員スーツ&ネクタイ」
もしくは、このような企業もある。
「役員は全員女性」
「役員は全員30代以下で、ジャケットにTシャツ、スニーカー」
たとえば前者の企業には「堅そう」「古そう」といった印象を持つ一方で、安定感や安心感を感じる人もいるかもしれない。
後者の企業には「スピード感がありそう」「柔軟性がありそう」のような印象を持つ反面、若手ゆえの経験不足や知識不足を懸念したり、モーレツすぎる社風なのではないかとネガティブに捉えたりする人もいるかもしれない。
どちらの企業にも、印象の良し悪しがある。よってここで問題提起したいのは「どのような役員構成が適切か」ではない。
注目してほしいのは「全員」の文字。
役員の属性が偏っている状況が体質に与える影響だ。
経営層の偏った価値観が働きにくさを創る
意思決定層の顔触れは組織の行動習慣にも影響する。
たとえば役員が男性のみの企業では女性への権限委譲が行われにくい。最前線で意思決定をするのは男性の役割で、女性はサポート業務に徹する。そのような役割分担が固定化されている組織は今なお少なくない。
家事や育児は妻に任せて、全時間を会社に捧げられる人だけが役員や管理職になれる。その状態を無自覚に創り、固定化してしまっている。
ゆえに役員や管理職になりたくない人が増え、時代錯誤に思われて若手から敬遠されてしまう。
気の合う仲間で創業したスタートアップは要注意
一つの価値観に偏ることは、スタートアップ企業でも同様に起こり得る。
役員は全員20~30代の単身者のみ。とにかくモーレツに仕事に没頭する。創業メンバーだけで事業展開しているうちはそれでもよいが、組織を大きくする段階で、家庭を持っている人や育児や介護をしながら仕事をしている人も輪に加わったとたん、うまくいかなくなる。
会社(役員)は彼/彼女らの気持ちや困りごとがわからず、これまでのやり方を変えようとしない。結果、働き続けるのが難しくなった人が辞めていく。新しい人が入っては辞めるサイクルに陥り、出血が止まらなくなる。
役員たちの多様性のなさが組織全体の横並び主義的な体質を助長し、そこに適応できない人たちを排除してしまうのだ。