こうした点について、ある在日中国人経営者に話してみると、「日本で行われる経済活動なので、当然、日本社会、日本企業だって恩恵を受けていますよ。中国人だけが儲かっているわけではありません。日本人は、中国人のお陰で儲かっている、と大きな声で言わないだけではないでしょうか」と語った。確かに、日本企業や日本人の中には、在日中国人と組んで、経済的に潤っているところもある。
「中国人は中国人に気を付けろ」
中国式エコシステムには弊害も
だが、ある中国人男性は次のように指摘する。
「顧客も中国人だし、競合(ライバル)も中国人です。でも、マーケットが大きいので、バッティングすることは思ったほど多くありません。それぞれの特徴により、棲み分けがある程度できています。それに、これからもっと中国から日本に移住してくる人が増えることを考えると、中国人目当ての不動産市場が拡大していくのは自然な流れ。日本の不動産価格を中国人が押し上げているというのも、その通りだと思います。
日本に留学したい中国人が多く、需要が見込めるので、十数年前から東京・高田馬場にいくつもの大学受験予備校ができました。当初は1~2校だけでしたが、その社員が独立して新しい予備校を作り、増えていったのです。予備校の運営に必要な技術やノウハウはあまり必要ありませんから、彼らは仕事を覚えたら、すぐに独立します。このようにして「ある業界」にどんどん中国人が増えていくというのが構図です。
ただし、最近、在日中国人の間では『中国人は中国人に気をつけろ』という話もよく聞きます。取引先に中国人社員が増えて、中には『こういう便宜を図るので、会社にバレないようにこっそりリベートをください』と囁く人もいます。
取引先に引き抜かれることもよくあります。この前までA社にいた人が、今度は同業のB社に、なんていうことも……。しかも何の挨拶もない。経営者としては、日本に『中国式エコシステム』が出来上がっていることで、話が早い、融通が利く、言葉の障害がない、といった利点がある反面、悪だくみをする中国のやり方をそのまま日本に持ち込むなど、弊害も起きているんです」
(フリージャーナリスト 中島 恵)