「ゲームは、メンタルヘルスに効果的です」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
ゲームとメンタル
「またゲームばっかりして!」
そんなふうに、親や友達に小言を言われたこと、ありませんか?
たしかに、1日中ゲームに没頭するのは問題かもしれません。
でも、最近の調査などによればゲームって、使いかたによってはメンタルヘルスにとっても良い影響を与えることがわかっているのです。
え、信じられないって?
それなら、メンタルヘルスにおいてゲームがどうして有効なのか、そんな話をあなたに共有したいと思います。
「ストレス解消」になる
仕事や勉強、人間関係で頭がパンパンになっていませんか?
上司に叱られたり、テストの結果が思わしくなかったり、人間関係に悩んだり。
そんなときには、日常から逃げ出して「非日常体験」を取り入れることもリフレッシュには有効と言われます。
ボタン一つで気軽にゲームの世界に飛び込み、まるで別世界にワープしたような気分でエンジョイできます。
そんなふうに「非日常体験」に気軽に触れられることって、じつは心のリセットになってストレスの解消になるんです。
「達成感」が満たされる
ゲームでボスを倒したり、難しいステージをクリアしたときの達成感は格別ですよね。
「自分、やればできるじゃん!」と自己肯定感もぐっと上がる気がします。
この小さな成功体験の積み重ねが、現実世界での自信につながることもあるそうです。
現実世界だと、なかなか進歩を感じにくかったり、成功するにも実感がわくまで時間がかかりすぎることもあります。
その点ゲームであれば、自分のレベルにあったやりこみを実現させることもできますし、難しい試練を乗り越えた次の日には、「昨日あの難関を突破したんだから、今日のプレゼンも乗り切れる!」なんて思えるようになるかもしれません。
「コミュニティツール」としてのゲーム
最近ではオンラインゲームやVRchatなどを通じて、世界中の人とつながれるのもゲームの魅力の一つと言えます。
共通の趣味をだれかと共有することはメンタルヘルスを良くするためには大切なことです。
仲間と協力プレイをしたり、時には熱い対戦で盛り上がったり、新しい友達ができることで、孤独感が和らぐだけでなく、コミュニケーション能力を高めることにもつながるでしょう。
「昨日のレイド、めっちゃ熱かったね!」なんて話しができるコミュニケーションが生まれると、日常生活ももっと楽しくなりますよね。
新たな刺激のための「窓」
ゲームはときに、新しい刺激を呼び込むための「窓」になってくれることもあります。
ゲームには感動的なストーリーや、美しい音楽が溢れています。
心に響くシーンに涙したり、壮大なサウンドトラックに胸を打たれたりすると、ついついゲームの作者さんの別のゲームもプレイしたくなったり、そこから波及して参考とした時代の考証や元ネタとなる原作の本を読んだり、またゲームミュージックから新しい音楽のジャンルを開拓したりと、さまざまなカタチで私たちの好奇心を満たしてくれます。
そんな刺激が私たちの感性を豊かにし、現実の世界でも人の気持ちに寄り添える力を育んでくれます。
ゲームを通じて得た感動は、日常の小さな幸せにも気づかせてくれるかもしれません。
「デメリット」は何だろう?
ですが、もちろん、ゲームをプレイすることにも注意が必要です。
ゲームのやりすぎで寝不足になったり、現実での友人や家族との交流など、ゲームに没頭しすぎて大切なことをおろそかにしてしまっては元も子もありません。
大切なのは「自分が楽しむ時間のバランス」を意識すること。
「ゲームは1日1時間」なんて言葉が流行っていたように、適度な時間で楽しんで、他の趣味や休息、現実での交流もしっかり取りましょう。
むしろ、ゲームをコミュニティツールとして家族や友達と一緒にゲームを楽しむのもおすすめです。
みんなでワイワイ盛り上がれば、コミュニケーションも深まり、絆が強くなります。
ボードゲームやパーティーゲームなら、世代を超えて楽しめますし、普段の家族だけでなく、おじいちゃんやおばあちゃんともいっしょに遊ぶことで、喜んでもらえるかもしれません。
「ゲーム=怠惰、良くないこと」というイメージは、いまだに根強いと思います。
ですが、普段ぜんぜん触らない人こそ、ときにはコントローラーを手に取ってみてはいかがでしょうか?
ゲームはあくまで一つのツールです。
上手に活用すれば、ストレス解消や自己成長、そして人間関係の構築に役立つことだってあります。
「またゲームばっかりして!」と言われたら、「これもメンタルヘルスのためなんだよ」と笑顔で返してみてください。
ただし、その言葉に説得力を持たせるためにも、バランスが大切だということはお忘れないようお願いしますね。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。