「本人は軽いグチと思っていても、9割の人が言っちゃいがちな自慢話があります」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
その自慢が「ストレス」になる
「さいきん大変でさぁ~」
「肩こりがひどくてさぁ」
「最近、ぜんぜん眠れてないわ~」
こんな苦労話を、つい誰かに話してしまうことがありませんか?
話す側は何気ない世間話のつもりでも、聞く側はそのネガティブな感情に影響されて、知らずにストレスを感じていることがあります。
最新の調査によれば、ストレスを共有することで話す側のストレスは軽減される一方で、聞き手には「この人は仕事ができないのかな」とか、「この話を自分にするのは迷惑と思わないのだろうか?」といったネガティブな評価をされることも少なくないことが明らかになっています。(註1)
人は誰かに共感してもらうことで気持ちが楽になるものです。
「大変だったんだね」
「それはつらかったね」
といった労りや共感の言葉をもらえると、安心します。
「マジですか! さすがですね」
「やっぱりすごいですね!」
といったストレスへの賞賛を得られると、誇らしい気持ちになることもあるでしょう。
しかし、ストレスや不調を「自慢」するようになると、他人の好感度を下げ、ストレスを広める迷惑な人と思われてしまうこともあります。
この失敗は、9割以上の人が言っちゃいがちなはずです。
愚痴を言うべきタイミングとは?
また、「自分はこんなにストレスを感じているのに、周りはズルをしている」という思考の偏りが生じる場合もあります。
大切なのは「タイミング」です。
仕事で忙しいときにストレスの話をされても、余計な心配にしかなりません。
聞き手に余裕がないときにストレスの話をされても、ただのプレッシャーにしかなりません。
仕事や家庭でたまったストレスや愚痴は、誰彼構わずにぶちまけず、「ここで言っていい場面なのかな?」と一呼吸おいて、適切なタイミングを意識するようにしましょう。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。)
(註1)Rodell, J. B., Shanklin, B. C., & Frank, E. L. (2024). “I'm so stressed!”: The relational consequences of stress bragging. Personnel Psychology, 1-25. Advance online publication. https://doi.org/10.1111/peps.12645
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。