1日の労働時間を
3時間55分に

 社会保険料の事業主負担を逃れたい企業の一部には、労働時間が週20時間を超えないように、1日の労働時間を3時間55分に刻んで採用しているところもある。国の思惑とは裏腹に、今回もまた労働時間を短縮する人が増えることが懸念されるのだ。

 こうした問題が起こる根源にあるのが、被用者保険の「被扶養者」制度だろう。

 被扶養者は健康保険や共済組合などの被用者保険にしかない制度で、被保険者(加入者本人)と生計維持関係にある配偶者や子ども、親などの家族が、保険料の負担なしで被用者保険の給付を受けられるというものだ。

 ただし、所得要件があり、現在は被扶養者の年収は130万円未満(60歳以上、または障害年金受給者は180万円未満)で、被保険者の収入の2分の1と決められている。これを超えると扶養から外れて、自分で保険料を負担して国民健康保険や勤務先の健康保険に加入しなければならない。

 前述のように、社会保険料を負担すると、目先の手取り収入は減ってしまう。そこで、この「年収の壁」を超えないように労働時間を調整し、被扶養者という立場を利用するというのが「賢いパート主婦」とされてきた。

 だが、短時間労働者のなかでも、こうしたお得な制度を使えるのは、家族が会社員や公務員などで被用者保険に加入している人だけだ。

 同じパート主婦でも、夫が自営業者の場合は、国民健康保険に加入して妻の収入に応じた保険料を負担しなければならない。さらに、シングルマザーの場合は、その収入で子どもの分の保険料も負担している。同じ職場で同じように働いている短時間労働者なのに、家族の職業によって社会保険料の負担が左右されるのは不公平と言わざるを得ない。