兵士の視界を追体験できる
大島海峡を見下ろす観測所跡 

 西古見地区の小高い丘の上、大島海峡を見下ろす立地には、観測所の建物がそのまま残っている。大島海峡は大型戦艦を収容できる地形であるため、この一帯は当時、軍事上の重要拠点とされていたのだ。

 正式には掩蓋式観測所と呼ばれるこの施設は当時、射撃目標の方向と距離を測定し、山陰部の砲台に伝える役目を担っていた。内部は6畳ほどのスペースがあり、中央に円形の台座が設置されている。これは監視用望遠鏡の土台として使われていたものだ。

 観測所の中から海岸を見下ろせば、往時の兵士の視界を追体験することができる。もちろん、今では戦争の雰囲気など微塵も感じさせない、穏やかな風景が広がっているばかりだが、さまざまな想いが胸に去来する。

「腹から内臓がはみ出し、糞尿や膿の異臭が充満…」戦時の沖縄「病院壕」の凄絶すぎる光景とは大島海峡を見下ろす山中に、植物に埋もれるように残る観測所跡  Photo by S.T.
「腹から内臓がはみ出し、糞尿や膿の異臭が充満…」戦時の沖縄「病院壕」の凄絶すぎる光景とは観測所の内部が自治体の管理が行き届き、きれいに掃除されている  Photo by S.T.


 こうして沖縄エリアに絞ってみても、戦争遺跡はまだまだ多数存在している。なかには南国沖縄のイメージとはかけ離れたものも多いはずだが、いずれも決して忘れてはならない記憶を湛えた貴重な遺構である。

 戦後80周年を目前に控えた今、これからの平和教育のためにひとつでも多くの戦争遺跡を保護し、当時の過ちを伝える貴重な資料として残すことを切望する。

「腹から内臓がはみ出し、糞尿や膿の異臭が充満…」戦時の沖縄「病院壕」の凄絶すぎる光景とはトーチカ(防御用の軍事拠点)から外を見ると、のどかな海が広がっている Photo by S.T.