学生時代から、既に数百万円という借金を背負わされた彼らが、「結婚は嗜好品」や「子どもは贅沢品」、あるいは「結婚は無理ゲー(無理なゲーム)」といった声を上げるのも当然ではないでしょうか。武蔵大学の大内裕和教授(教育学者)も、新聞の取材に対し、「奨学金の返済負担による未婚化・少子化は深刻だ」と答えています(22年 東京新聞、8月12日掲載)。
ひとたび海外に目をやると、ヨーロッパは大学の学費を無料とする国が多いほか、アメリカもスカラーシップ(奨学金制度)の基本は「返済不要」で、有利子の教育ローンと明確に区別しています。
ところが日本の奨学金は、世帯所得などによって受給資格が線引きされるうえ、6割以上が有利子です。本当にこれで良いのでしょうか。
政治の大きな役目は、若者に未来の希望を抱かせることであるはずです。彼らの未来への出資は、「施し」ではなく「投資」でしょう。イノベーションに官民120兆円もの投資目標を掲げるのであれば、その一部をなぜ奨学金関連に回さないのか、理解できません。