図4-9は対円で見たアメリカドルのレートの推移である。期間は、通貨の固定相場時代が終わった1973年以降である。ということで、1ドル360円時代を除いている。
その当初、アメリカドルのレートは308円の固定レートを離れて大きく下落した。アメリカ経済の力が衰え、反対に日本の経済力が大きく上昇した時代に相当する。
この日米の経済力の関係が逆方向に動き始めたのは、1990年代半ば頃である。日本には、1980年代後半のバブル崩壊とその後の経済の混乱、成長の停滞があった。
一方のアメリカは、インターネットの普及に象徴されるIT(情報技術)の急速な発展があり、再び経済力を増した。この彼我の差がアメリカドルのレートを上昇させている。
我々は思っている以上に
円で財産を保有している
なお、図4-9はアメリカと日本の、2国間の経済力の関係だけを反映しているため、あまり明確には日本の経済力の相対的な劣化が表面化していない。関心があれば日本銀行が公表している実効為替レートの数値を見ればいい。日本の経済力の相対的な劣化がより明確になる。
実効為替レートとは、日本の貿易相手である各国の為替レートを、各々の国と日本との貿易額を用いて加重平均したものである。これによれば日本円のレートが1990年代半ば以降、大きく下落している。