石破首相の行動から見える
マキャベリズムの片鱗とは
たとえば、マキャベリの言葉に照らして石破首相の行動を見て行くと、それがよくわかります。メディアに批判される「ブレ」も、実は計算の内ではないかと思えるフシもあるのです。
(1)決断力のない君主は、多くの場合、当面の危険を回避して中立を選ぶ。そして大方の君主はそれで滅ぶ
岸田元首相は「ドリームチームをつくってほしい」などと言っていましたが、今回の選挙で安倍派を壊滅させないと、石破氏のやりたい政策はできません。それは前任者の岸田氏が安倍元首相の顔色ばかりうかがって結局尻拭いで終わり、独自性を出せなかった様子を見てきたからでしょう。
応援してくれた岸田氏の助言に反して、高市早苗氏も小林鷹之氏もわざと閑職に誘い、自分から断らせるという手を使いました。中立は選ばず、政敵を葬る策に出ました。一番やりたいことは日米同盟などの防衛・軍事だから、防衛大臣経験者を4人も閣僚にしました。「友達がいないから防衛族の友人ばかりを処遇した」と言われますが、これは防衛省の実態を知らないゆえの批判です。
長年米国に守られて自主防衛能力を持つ気概のないこの組織は、多くの幹部が防衛産業に天下りして、日本に米国の兵器を買わせるよう圧力をかけています。こうしたOBの力を抑えるためには、自衛隊内部のことを深く知る大臣が絶対に必要なのです。
(2)自ら実力を持たない権力者の名声ほど、あてにならないものはない
一匹狼の宰相である以上、とにかくこの選挙に勝つ。これが使命だから、最初は総裁選に勝つために「じっくり議論する」と野党も国民も騙し、一機に総選挙に持っていく。野党の選挙準備が整わないうちに勝って自公連立を維持できれば、自分のやりたいことができます。
もともと解散が近いことは、野党もわかっていたはず。今になって「嘘つき」などと批判しても、国民の「政権奪取の気概のない野党」という見方を助長する効果しかありません。
(3)好機というものは、すぐさま捕えないと逃げ去ってしまうものである
野党に選挙協力の時間を与えず、とりあえず過半数をとりに行く一方で、「裏金議員」を非公認とし、重複立候補を禁じました。これも最初は党内の意見に負けた形で「全員公認の方針」と報じられていましたが、世間の非難の盛り上がりをうまく使って、自分が恨まれないように方針転換しました。
選挙が始まってからでも、不祥事が発覚すれば公認を外し、重複立候補もさせないという処分はできます。「裏金」という爆弾を抱える安倍派を中心とする議員たちが、常に石破氏のご機嫌をとらないと不安で仕方がないという状況を作り出し、選挙後は一機に「石破チルドレン」を作ってしまうことができます。
たとえば、安倍元首相の絡む醜聞のすべてにおいて名前が上がった萩生田光一氏や森喜朗元首相側近の高木毅氏らを公認しなかったのも、安倍派や次回の政権を狙う高市氏にとっては痛い処分であり、世論の反応もいいでしょう。これで党内は引き締まります。