また、完全な政敵となった麻生太郎氏には、野党の選挙協力の様子を見ながら保守系無所属を立候補させて保守票を分裂させ、落選させるのも一つの手です。(80歳を越えると重複立候補できないので、小選挙区で落ちれば政界から去らなければいけなくなります)。保守系候補者は、麻生氏と同派閥で同じ九州出身でありながら犬猿の仲だった古賀誠氏が、引退してからも有力な地方議員を多数知っているので、彼の協力を得る手もあります。
(4)大いなる意欲のあるところには、大いなる困難はない
政治記者は、日米地位協定改定や横田空域の取り戻しなどは不可能だとすぐに言います。しかし、まだ日本の首相で誰も米国にこの議論を持ち出した人がいないだけで、それは不可能ではないと思います。たとえば、敗戦国であるドイツもイタリアも米国の地位協定を改定させました。またフィリピンは、一度決めた地位協定の破棄を撤回しました。米国にとってフィリピンが対中国のためにどうしても必要になったからです。
このように各国は、米国に対して戦略的に動いています。日本列島は海洋国家の米国にとって、どうしても大事な場所ですから、安倍流の「ポチ戦術」ではなく対等の同盟を目指すことは「大いなる意欲」であり、記者が「不可能だ」と騒ぐ方がおかしいのです。
「バイデン大統領との最初の会談で日米地位協定についての話が出なかった」と批判した記事もありましたが、次の大統領が決まる直前に重大事を打ち明ける必要がないのは当然です。
(5)変革は必ず新たな変革を呼ぶ
金融政策面でも、石破首相がフラフラしているから株価が下落すると大騒ぎです。が、選挙が終わり安倍派を壊滅(落選だけでなく次回の閣僚の一本釣りなど)させてから、アベノミクスに猛反対していた優秀な金融マンに後始末を任せればいいのです。その気になれば、首相はなんでもできます。アベノミクスの負の側面の始末をすれば、自ずと円安や株問題も片づいてきます。本格的な中流社会に日本を戻すのは、その後の課題です。
盟友の女性秘書が明かす
石破氏の本当の魅力とは
とにかく、石破氏の掲げる公約は最初から時間がかかることばかり。もし石破氏が「マキャベリ作戦」に失敗しても、政権交代が起こるだけです。これはこれで、日本の宿痾である世襲議員制度を立憲民主党の野田代表が一掃してくれるのですから、私は今回の選挙は大変楽しみにしています。
ちなみに、吉村さんに「石破氏にはどんな魅力があるのか」と聞いたら、「私は普通のサラリーマンの家でしたが、石破さんは父親が内務省出身で戦後知事になった人だから……夜は読書しながらワインとクラシック。ああ、保守本流とはこういうことなんだと感じ入った」という言葉が返ってきました。
実に印象的な言葉でした。
(元週刊文春・月刊文藝春秋編集長 木俣正剛)