足元の輸出数量の減少は、不動産市場の調整に伴い景気が低迷する中国経済や、インフレ抑制を目的とした利上げに伴い景気が減速する欧米経済など、海外需要の減少を反映している面がある。
しかし、海外要因だけでは長期にわたる輸出数量の減少を説明できない。実際、21年上期から24年上期にかけての世界の貿易量は4.1%増加しており、海外需要は日本の輸出数量の減少とは対照的に緩やかに拡大している。
輸出数量の減少は、価格競争の激しい汎用品などの生産が海外へとシフトした影響が大きい。一方で、国内で製造される付加価値の高い製品の販売が海外でそれほど伸びておらず、海外生産シフトに伴う輸出数量の減少を補い切れていない。
輸出品の高付加価値化は日本経済にとってプラスであるものの、今後は品質の高い日本製品をいかに海外に売り込むかが輸出拡大の重要な鍵となる。企業には品質の向上だけでなく、輸出先のニーズに合った製品開発を進めることが求められる。そのために、政府は海外市場に関する需要調査や情報提供、現地企業との関係づくりなど、企業の海外進出や販路拡大の支援に、よりいっそう注力する必要がある。
(日本総合研究所調査部 副主任研究員 村瀬拓人)