ざっと1学年分を100万部と計算すれば、毎年最上位にランクインすべき「超ベストセラー」なのである。大人になっても、ニュースで知った国や都市名などを確認する時に地図帳を取り出す人は少なくないようで、卒業して他の教科書は捨てても地図帳だけは保存しているという話はよく耳にする。
それでも20年、30年と経過すればだいぶ内容が古くなるのは当然で、東西のドイツは統一されるし、ソ連やユーゴスラヴィアは消滅、後者が元あった場所の南端には「北マケドニア」という新国名も出現している。グルジアはまさかの英語読み「ジョージア」に改称され、アフリカのザイールはコンゴ民主共和国と名を変えた。自然の地形も同様で、たとえばカスピ海の東に位置するアラル海は、ソ連時代の灌漑の悪影響で見る影もなく縮小している。
1957年の地図帳に書かれてある
「ハーヌ民国」とはどこの国?
私が戦前の鉄道時刻表の復刻版に熱中していた大学生の頃(1980年前後)だろうか、小泉純一郎元首相と高校の同級生だったという叔母から地図帳を譲り受けた。本稿を書くにあたって探しても見当たらないのは残念だが、昭和32(1957)年頃の版である。当時の日本国内は今はなき多数のローカル線たちで賑わっていたし、世界もまったく「景色」が違うので興奮したものである。