大型化とブランドアイデンティをどのように保つ?

 クシュタールの買収提案がトップニュースになった日、コンビニとガソリンの業界メディア『CSP Dairy New』には、大きなポップアップ広告が出ていた。「セブンイレブンは80店舗を売却します。35店舗はガソリンスタンド併設、60カ所はフランチャイズ物件、25カ所はリース物件。入札期限10月1日」という内容だ。

 米国セブンは不採算店444店舗を閉鎖するとともに、セール・リースバックで773億円の特別利益を計上した。セール・リースバックとは、セブンが店舗の不動産(自社物件)を売却し、その上でその物件にリース料を払って営業を続ける方法で、米国では20世紀初頭にチェーンストア法を逃れるために石油会社が使用してから活用される、おなじみの方法だ。

 不採算店舗を売却する一方で、Grab&Go(持ち帰り)のホットケースや、セルフ・ローラーグリル、店内で焼き上げるベーカリー、スペシャリティ飲料の店を2024年までに1900店舗も展開するという。また、LAREDO TACOやSpeedy Cafe、Raise The Roost Chicken & Biscuitsというレストランを併設し、クラフトビールなどの高級なものまで品ぞろえするエボリューショナル・ストアの実験を行っている。

 これらの経験を活かして、24年に115店、25年125店、26年175店、27年には200店舗の新標準店舗をオープンする計画だ。コンビニ競争の焦点が郊外の大型店に移っていることは確かで、立地移転が進んでいる。

 この新標準店舗は、米国セブンが抱える都市中心部や古くからの店舗群を、ネガティブな意味で際立たせるだろう。従来型店舗は、どちらかというと小さく、古く、狭く、清潔感が薄れたものも少なくない。

 新標準店舗は、従来型コンビニのフォーマット・立地とは明らかに異なり、High Volume Retailerと互角に戦うための堡塁にはなる。が、ブランドイメージの統一感は薄れるだろう。

 さらに言うと、アマゾン・ドットコムが、都市部でアマゾン・グローサリーの実験を始める。アイテム数は3500と、典型的な都市型コンビニとほぼ同じであり、都市部でも新規参入者との競争が激しくなるだろう。都市部は高コスト、限られたスペース、セキュリティ問題などもあり、既存店も競争に対抗するためには店舗のリフォームを進めなくてはならない。時間のかかるプロセスは、ますますブランドイメージの統一性の維持を難しくする。

 なお、クシュタールがノルウェーでかつて国営石油会社であったSTATOIL約500店舗を買収した際、クシュタールはサークルKの基準に満たない約130店舗に製品を供給するもののサインポールは掲げさせなかった。結果的にこれらの店舗は、別ブランドを立ち上げた。クシュタールはかなり明確な意思を持って、サークルKブランドを守ったのである。