DX投資がコンビニを追い詰める?

 2011年、スマホのアプリ(ロイヤリティ・プログラム)を最初に取り入れたコンビニが、米国セブンであった。そもそも地域密着のコミュニティストアであれば、アプリによって地域を越えた顧客の囲い込みを行う必要は少なく、全米チェーンのセブンだからこそアプリが必要になった。しかしこれがコミュニティストアとしてのコンビニ業界を変革する契機にもなった。

 アプリ会員はいつもの店だけでなくどこでも会員価格でコーヒーを買えるなど、移動を常とする米国のドライバーを捕らえた。コンビニ顧客の90%以上がロイヤルティ・プログラムやメンバーシップを活用しているというデータもある。このDXへの投資がコンビニを変化させている。AIを活用し、値札はダイナミックプライシングを含めてデジタルになり、セルフチェックアウトなどのIT化が投資の必要性をさらに強めている。

 23年度の報酬が77億円だったことで一躍有名になったジョセフ・マイケル・デピント・セブン&アイ取締役専務執行役員(米国セブンCEO)は、米国セブンの方針として、フード、オリジナル製品とDXを活用したデリバリーの強化を強調している。まさに、新標準店舗の要素である、フレッシュフード、Grab&Go、セルフ・ローラーグリル、ベーカリーなどとガソリンスタンドを持つ大型施設を指している。

 しかし、米国セブンの店舗は1万3000店を超える。方針は理解できるが、果たして実行力が伴うのだろうか。最初の4年間で700店舗の計画だが、このペースでは全店舗のリプレースに15年以上もかかってしまう。

 もっとも、1万3000店全てが一つのフォーマットに収斂することはないと筆者は考える。米国セブンは業界トップとして、もっと多様なフォーマットを展開する必要があるはずだ。魚の群れがどこに、どのように向かうのか、固唾をのんで見守りたい。