名僧が修行し、元三大師とゆかりの深い横川
西塔からバスで10分。歩いて向かうには1時間以上かかる、三塔のうち最北方に位置する「横川(よかわ)」は、第3世座主慈覚大師円仁によって開かれました。源信、親鸞、日蓮、道元などが修行した地でもあります。遣唐使船をモデルにしたという本堂「横川中堂」には、御本尊の聖観音菩薩立像がいらっしゃいます。普段は秘仏ですが、11月24日までは内陣が公開中。御本尊の姿をより近くで拝むことができます。横川中堂限定のお守りは、今期限定「紅守」で、3色がそろいます。
横川中堂から5分ほど進むと、元三大師堂(四季講堂/重要文化財)が現れます。平安中期、第18世天台座主として比叡山内の堂宇の整備や学問の興隆に努め、比叡山の最盛期を築いたことから「延暦寺中興の祖」とあがめられる慈恵大師良源の住坊跡で、彼自身が御本尊となっています。
1月3日に入滅された(亡くなった)ことから「元三(がんざん)大師」と呼ばれる慈恵大師良源には、数々の摩訶(まか)不思議な法力の逸話が伝わります。世に疫病が蔓延(まんえん)したとき、大きな鏡の前に自身の姿を映して疫病退散を念じると、骨ばかりになった恐ろしい鬼の姿に!
「角大師」とも称されるそのお姿を弟子が版木に写しとってお札にし、世に広めたところ、パンデミックが鎮まったといわれます。この角大師の護符は、厄除けの御利益ありと厚く信仰されています。家の神棚や仏壇、床の間、玄関など、清浄な場所に貼るとよいそうです。
元三大師はおみくじの元祖でもあります。事前に予約すれば、本格的なおみくじを引くこともできます。いわゆる運試しではなく、人生の岐路で生じた選択の迷いについて、元三大師からお言葉をいただくというもの。自身の迷いを僧侶に話してから、正式な作法にのっとり、おみくじを引きます。時間が許せば、元三大師堂のさらに北方にある元三大師「御廟」へも足を運んでみましょう。