秘仏御本尊が拝める「西塔」は欠かせない

釈迦堂西塔「釈迦堂」内陣で見られるプロジェクションマッピング。須弥壇の裏手は参拝者も撮影OK!

 参拝者が多く集まりにぎわう東塔から徒歩20分ほど。バスなら3分でアクセスできる「西塔」は、第2世天台座主の寂光大師円澄によって開かれました。深山幽谷の趣をたたえる境内では、「釈迦堂」と呼ばれる本堂の転法輪堂(重要文化財)、聖徳太子ゆかりの「椿堂」、弁慶ゆかりの「にない堂」(重要文化財)、最も神聖な場所である最澄「御廟」の「浄土院」(重要文化財)などが見どころです。

 にない堂は、常行堂と法華堂という同じ形をした二つの修行道場が渡り廊下でつながれた造り。延暦寺の僧であり力自慢の弁慶が、てんびん棒に見立てて担いだという逸話が語り継がれています。この渡り廊下の下をくぐり、石段を下りた先に本堂である釈迦堂がたたずみます。織田信長による焼き打ちの後、豊臣秀吉が鎌倉時代築の三井(みい)寺の弥勒堂(金堂)を移して建立したもの。比叡山の山内で最も古い建造物です。

 12月8日まで、7年ぶりに秘仏御本尊「釈迦如来像」の特別御開帳が行われていて、普段見られない内陣に入ることができ、世界遺産の文化財内部で実現した“最古×最新”奇跡のコラボレーションが見られます。

 蓮の花が咲く水面(デジタルアート)の上で、持国天、梵天、帝釈天、増長天の4体の仏様が幻想的な光に照らされる様子を見ていると、異世界へいざなわれるような心地になります。須弥壇の裏手では、祈りを込めてタンポポに息を吹きかけ、綿毛を飛ばすと映像が動き出す体感型のデジタルアートも見られます。また堂内では、自身に克(か)つことを祈願する釈迦堂限定「勝守」を授かることができます。
 
 西塔の拝観受付から、釈迦堂とは反対側へ400mほど鳥のさえずりを聞きながら歩いた先には、822(弘仁13)年に56歳で入滅された伝教大師最澄「御廟」である「浄土院」がたたずみます。比叡山で最も清浄な聖域として、最澄の生前同様に境内を掃き清め、食事の給仕などをする侍真僧がお仕えしているそうです。

にない堂弁慶が担いだと伝わる西塔「にない堂」