三宅香帆が読書で実践していること

――「ファスト教養」や「インスタント読書」(本の要約)が求められる傾向も強いですよね……。

 私は、インスタントな要約であっても読書への入り口になっていればいいと考えています。要約を求める人って、結局は「本が読みたい人」なんです。要約すら「読まないでいい」と思っている人は、そもそも読書はしないだろうなって思います。

 問題は、本を読みたい人がいるのに、読む時間がない、読めない社会になっていることが議論されてこなかった点です。

――働きながら読書の幅を広げるには、どうしたらいいと思いますか?

 AmazonなどのECサイトで書籍を探すと、目当ての本にストレートに行けてしまって、他の本が目に入りにくいっていう話をしばしば耳にしますよね。そういう側面は確かにあるなと感じていて。書店に行けば目的の本にたどり着くまでに、いろいろな棚や本の背表紙、平積みの本に目が行くじゃないですか。書店は「ノイズのある本選び」ができる場所で、そこに書店の豊さがあると私は思っていて。

 ECだけだと、自分の仕入れる知識がどうしても限られがちになってしまうけど、書店に行けば偶然的な本との出合いが増えて、思わぬ知との出合いも生まれやすくなります。それが読書の幅を広げると思っています。

――三宅さんはどこで本を買っていますか?

 書店で買うことが多いです。どんな新刊が出ているかという情報って、書店に行かないと幅広く拾えないことが多くて。私は普段、京都にいるので、京都の大垣書店によく行きます。

 あとは電子書籍ストアの「honto」がよくセールをしているので、hontoで買うことも多いです。

――三宅さんって何冊くらい本を読むのかも気になります。

 平均すると、年に365冊くらいですかね。ただ、3冊読む日もあれば、読まない日もあったりする感じです。

――漫画も読みますか?

 読みますよ!最近だと、『【推しの子】』が完結したので、1巻から読み返しています。

――読書に苦手意識がある人には、どうやって読書の魅力を伝えますか?

 いえいえ、私はそういうつもりはなくて。例えば、私は運動がすごく苦手な子どもでした。そんな私が「運動の素晴らしさ」を他人から説かれても、全然やる気にはなりません。

「それが『いい』ということは分かったけど、やりたくない」という人にやらせる意味って、あまりない気がします。それよりは、本を読みたいけど読めない人が読めるようになる社会になってほしい、というのが私の思いです。

 最近はオーディオブックもたくさん出ていて、朗読を聴ける機会が増えていますよね。そういう意味では、読書に対するハードルは下がってきていて、読書人口が増えること自体は素晴らしいことだと思っていますよ。