「ベンチャーでは“顧客”よりも意識すべき存在がいます」
そう語るのは、転職エージェント「キープレイヤーズ」代表の高野秀敏さん。1.1万人以上のキャリア相談、4000社以上の採用支援の経験を持つヘッドハンターであり、「現場」と「経営者」の両方の視点で、「圧倒的に活躍する人たち」と関わってきました。
その高野さんがベンチャー流の「結果を出す働き方」をまとめた書籍『ベンチャーの作法』が刊行。“きれいごと”抜きの仕事論に、「若手のときに知りたかった!」「現代のビジネスパーソンの必読書だ!」とたちまち話題に。SNSでも多数の感想が投稿されるなど異例の反響となっています。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「ベンチャーで働くうえで意識すべき相手」についてお伝えします。

仕事ができない人は「顧客のために仕事をする」。では、本当に評価される人はどうしている?Photo: Adobe Stock

「顧客を大事にしろ」の本当の意味

 あなたは普段、誰のために仕事をしているでしょうか。
 商品やサービスのユーザー、取引先企業、協力会社、親会社、株主。企業にはさまざまなステークホルダーが存在します。
 一般的には、多くの企業で「顧客」のほうを向いて働くよう、行動指針として掲げられているでしょう。

 ベンチャーでも、経営者は「顧客を大事にしましょう」と言っているはずです。
 ですが、言葉の内容をそのまま受け取ってはいけません。

 経営者がこのような発言をするとき、その裏にはこんな思考が隠れています。

「顧客を大事にしろ」という、私の言葉をしっかり守れ。

 要するに「私(経営者)がいちばん」です。
 これが、ベンチャーにおける絶対ルールなのです。

ベンチャーでの評価は「数値化」できない

「そうは言っても、仕事は顧客のためにおこなうべきですよね?」

 この指摘は、当然です。
 あらゆる仕事は顧客のためにおこなうべきであり、顧客に選ばれることで企業は大きく成長していきます。
 ですがこれも、厳密にはちょっと違います。

「(経営者が決めた方法で)顧客のためになる仕事をする」

 これが真実です。

 社員数百人ほどのベンチャーでは、現場マネージャーが一次評価をつけたうえで、最終的には経営者が全社員を評価します。
 明確な基準がなく、経営者の独断と偏見によって評価がつけられていることも少なくありません。

 そして、たとえ結果を出したとしても、経営者の指示と違う方法によるものであれば「反抗的なやつ」と烙印を押され、評価を下げられてしまいます。
 現場と経営者の距離が近い分、仕事の進め方や姿勢に対する感覚的な評価も加味されるのです。

「顧客」より「経営者」を見ろ

 たとえ顧客のためとはいえ、経営者の指示や方針に歯向かってはいけません。
「統制を乱す人」として危険視されるだけです。

 ベンチャーにおいては「経営者」も、顧客と同じくらい、いえ、それ以上に意識すべき対象なのです。

 そうして評価されるからこそ、より多くの「顧客」のためになる大きい仕事を任せてもらえます。
 より多くの顧客に喜んでもらうために、まずは経営者から評価されることが大事なのです。

(本稿は、書籍『ベンチャーの作法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)