筆者はこの17年ほど、国内外のさまざまな業界・業種のメディアトレーニングや広報コンサルをしてきた。その中には先ほど紹介した企業のように、「提供しているサービスや技術が悪用されている」という問題を抱えているクライアントも少なくない。ただ、そういう企業が、自社のスタンスを発信しようとすると、ほとんどはLUUPやタイミーのようになってしまう。

 自分たちのサービスや技術について「変えたくない」という思いが強すぎるがゆえ、自分の非を認めないまま、問題やトラブルをうまくやり過ごそう、という付け焼き刃的な危機管理や、叩かれてもじっと耐えて人々が忘れてくれるのを待とう、という持久戦型の危機管理になってしまうのだ。 

「社会のために自分を殺す」という対応ができる企業は、非常に稀だ。

 なので、現実的なところでは実際にはそこまで「自分を殺す」ということまではしていないのだが、社長や経営陣のメッセージや、これまでよりも踏み込んだ対策をすることで、「身を切る改革を演出する」というやり方を選ぶ企業も多い。

 LUUPもタイミーなど最近の炎上企業には、そのような「演出」が少し乏しかったのかもしれない。

 サービス的にもまだまだこれからさまざまなトラブルが起きるだろう。炎上企業の皆さんは、「自分たちの対策で世間の人々を納得させよう」なんて大それたことは考えない方がいい。大切なのは、ロジックではなく、日本人の好きな「みんなのために自分を殺す」という「精神性の演出」である。

 炎上企業の皆さんはぜひそのあたりを心がけて、危機管理対応にのぞんでいただきたい。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

LUUP、タイミー、メルカリ…“何を言っても炎上する企業”が国民の怒りをしずめる“たった1つ”の方法