子どもの間でスマ―トフォンの利用が広がり、犯罪に巻き込まれるケ―スが増えている。
警察庁によると、2023年にSNSをきっかけとした犯罪被害に遭った小学生は139人、中学生は748人、高校生は713人に上った。
子どもの身を守るために、親として何ができるのだろうか。
本記事では、池上彰総監修の『いのちをまもる図鑑』(ダイヤモンド社)で第4章「犯罪からいのちを守る」の監修を務めた危機管理の専門家・国崎信江氏に話を聞いた。
*出典:警察庁「令和5年における少年非行及び子供の性被害の状況」

【要注意】犯罪被害の90%以上がフィルタリングなし! 子どもにスマホを渡す前に親が知るべきことPhoto: Adobe Stock

フィルタリングなしのスマホは危険すぎる

――『いのちをまもる図鑑』には、子どもがスマ―トフォンを持った場合の付き合い方が書かれています。子どもにスマホを渡す前に、フィルタリングはしたほうがよいのでしょうか。

【要注意】犯罪被害の90%以上がフィルタリングなし! 子どもにスマホを渡す前に親が知るべきこと『いのちをまもる図鑑』本文より イラスト:室木おすし
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国崎信江氏(以下、国崎):令和5年にSNSが原因で犯罪被害に遭った子どものうち、フィルタリングを利用していたのはたった10.6%でした。有害サイトにアクセスしないために、親がフィルタリングをかけることは重要です。

――どんなフィルタリング設定をすればよいでしょうか?

国崎:これは使う機種によって違います。昔は「LINEが使えないからキッズ携帯はやめよう」という保護者も多かったのですが、今はインタ―ネットがつながるキッズスマホもあり、キッズ用であればインタ―ネット利用にあらかじめ制限がかかっています。

法令等により、18歳未満の青少年が利用する場合、原則「フィルタリングサ―ビス」の加入と携帯会社は機種販売時にフィルタリングの設定を行うことが義務付けられています。しかし、親が申し込みの際に子どもが利用することを伝えない、子どもにせがまれてフィルタリングサ―ビス不要申出書を提出するなど安全な環境で使用されていないようです。

また、スマホでは携帯電話回線用のフィルタリングだけでは有効に機能しません。無線LAN回線用のフィルタリング、アプリのフィルタリングも必要で、これら全てに対応しないと安全ではありません。

また、セキュリティ―ソフトを入れることも大事です。iPhoneなどは高いセキュリティ―機能があるので必要ないと思う人も多いのですが、不正なアプリ使用やウイルス感染を防ぐためには、やはり入れておいたほうが安心です。

無料サ―ビスの「広告」に過激なもの・危険なものが含まれる

――セキュリティ―ソフトは入れていない人も多そうです。

国崎:ただ、親が色々な対策をしても100%防ぐことは難しいです。他の方法で子どもが自分から見に行ってしまえば意味がないですし、フィルタリングを解除してしまったりもするので。

なので100%はないと考えて、「どんなサイトが危険なのか」「課金するものに関しては、親の承諾を得てから」ということをお子さんと話すことが大事です。

特にゲ―ム系は注意が必要で、例えば無料ゲ―ムのほとんどが広告が表示されるようになっています。「これを見たら1回遊べる」とか、「クリックすると次の漫画が読める」とか。それで続きが気になってクリックすると、過激なものが出てきてしまったりするので。

子どもを過激なサイトに触れさせないために

――広告については考えが及んでいませんでした。確かにYouTubeなどでも子どもがたくさんの広告を見ることになります。

国崎:YouTube Kidsであれば有害な広告は出ないようになっていますが、一般用のYouTubeをよく見るのであれば広告が出ないタイプに契約するのも一つです。あとは、ゲ―ムでも無料のものではなく、いっそ買い切りで広告に飛ばないようにするとか。大人は広告があっても無料のほうがいいと思ってしまうのですが、子どもが軽い気持ちでクリックしてしまうと危険な場合もあるので、子どもがよく使うサイトやアプリにどんな広告表示があるのか一度確認するといいでしょう。

※本稿は、『いのちをまもる図鑑』についての書き下ろしインタビュ―記事です。

『いのちをまもる図鑑』第4章監修者
国崎信江(くにざき・のぶえ)

危機管理アドバイザ―。危機管理教育研究所代表
女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。国や自治体の防災関連の委員を歴任。『10才からの防犯・防災』(永岡書店)や『おまもりえほん』(日本図書センタ―)などの監修もつとめる。