結果的には、三菱UFJに対する処罰は金融庁からのものに限定できそうです。金融秩序を揺るがした咎により一定の処分が下りることからはまぬがれないでしょうけれども、裁判で銀行の責任が追及されるリスクはなくなったということです。

 ではその回避された訴訟がもし起きていた場合には、誰がどのような理由で経営責任を問われるのでしょうか。この記事ではコンプライアンスを切り口に何が問題なのかを解説してみたいと思います。

三菱UFJ銀行の記者会見で
引っかかる点が2つある

 そのコンプラに関わる箇所について、記者会見を見ていて気になったやり取りがふたつありました。

 ひとつは犯行を行った元行員について、責任者の地位についた当時は評価に問題がなく、その後、犯行を行うように(人柄が)変わったという説明です。

 暗に人事部には任命責任がなかったと言いたかったのでしょうか。気になるやり取りでした。

 もうひとつは鍵を管理するプロセスについて「少し不十分な点がありまして」と説明している点です。プロセスに不備があったから事件が起きたわけですが、役員としては暗に些細な欠陥があっただけだと言いたかった様子です。

 では責任逃れを疑われるこのふたつの発言、裁判になった場合、どちらがより責任が重いのでしょうか。

 それを理解していただくために、コンプライアンスの基本問題を一問、クイズ形式で出させてください。

 読者であるあなたは、とある携帯ショップチェーンの店長だったとします。繁盛店で業績は安定しています。従業員は皆、あなたと昔から一緒に働いてきた仲間ばかり。あなたの評価では悪人はひとりもいません。

 さて、お店のバックヤードには販売用のiPhoneが無造作に置いてあります。あなたは従業員を信じて、バックヤードに鍵をかけていませんでした。そのお店である日、iPhoneの盗難が発覚します。在庫のiPhoneが抜き取られて転売されていたのです。

 やがて社員のひとりが自首します。実は家族の借金で生活が回らなくなり、つい在庫を盗んだというのです。

 ここで問題です。あなたはその後、本部から呼び出されます。あなたは処分されるのですが、それはどのような理由からでしょうか?コンプラの観点でお答えください。

 これは要するに部下が犯罪行為を行った際に、管理職であるあなたにどのような責任が問われるのかを考える問題です。

 先に正解をお話しします。