責任は半沢頭取ではなく
三菱UFJフィナンシャル・グループの社長にある
三菱UFJフィナンシャル・グループの亀澤宏規代表取締役社長です。その理由はニューヨークに上場している企業の経営者はもれなく、コンプライアンスの仕組みの最高責任者になっているからです。
亀澤社長もご本人がおそらく自覚されているとおり、株主に対して「私が株主の財産が失われないような仕組みを構築した責任者です」という英語の書類にサインをしているはずです。
そうサインしたうえで、グループの最重要企業の中の重要なサービスにおいて、鍵の管理と運用を同じ人にまかせる仕組みを漫然と残していた。今でも「少しだけ不十分」という認識レベルの幹部を任命したままでいる。
亀澤社長にはこういった不備をチェックして無くしていく責任があるのにもかかわらずです。
結果、銀行の信頼を揺るがす大事件が起きたのですから、当然、裁判になれば亀澤社長が株主からの代表訴訟の矢面に立たされるところでした。
とはいえ11月22日にこの事件が最初に明るみになった直前の株価は1825円、それが翌営業日の終値で1826円、記者会見翌日の終値でも1821円ですから株主が代表訴訟を企てる可能性はほぼなくなったと考えられます。この結果に、責任あるひとたちは一斉に安堵されたことでしょう。
最後に、この一連の説明を聞いて、「そうは言っても、行員が盗んだのは顧客の財産で、株主からは何も盗んでいないじゃないか」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
この指摘にまじめに反論するのも野暮かもしれませんから、この記事のエンディングは、世界を揺るがす経済犯罪を題材にした有名な映画のラストシーンのセリフをオマージュして〆させていただきます。
「いや、奴はとんでもないものを盗んでいきました。利用者のこころです」
株主の手から三菱UFJブランドが盗まれてしまったことは間違いのない事実でしょう。