「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』。「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集します。
![【能力は関係ない】「年収が高い人」だけがしている行動・ベスト1](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/3/5/670/img_3582f6a8d4637cdc704c7f6efe5c0004278807.jpg)
人材の価値は「需要と供給の関係」によって決まる
私たちは労働市場における「自分の価値」を高めるために、語学を学んだりスキルを身につけたりという努力をしているわけですが、そもそも「労働市場における価値」は何によって決まるのでしょうか?
ともすれば、この問いに対して「それは能力や知識の水準だ」と答えを返してしまいがちですが、この答えは全くの誤りだとは言わないものの、不十分だと言わざるを得ません。なぜなら、どんなに素晴らしい能力や知識であっても、それが需要に対して過剰に供給されることになれば、それらの能力や知識には価値が認められないからです。
ここは非常に重要な点なので、市場におけるポジショニングを検討する際は常に念頭に置いておいて欲しいのですが、「市場における価値」は「能力や知識の水準」ではなく「需要と供給の関係」によって決まります。
流行の資格や学位は戦略的には「スジの悪い選択」
そういう観点から言えば、「流行りの資格や学位」を取るために時間をかけることは、競争戦略論の枠組みから言えば、実は最もやってはいけない時間資本の使い方ということになります。なぜなら「流行っている」ということは、この後で供給量が大きく増加することを意味するからです。
労働市場での価格は、能力や知識そのものの価値よりも、需要と供給の関係によって決まりますから、供給量が大きく増加することが予測されるスキルや知識を獲得するために時間資本を投資するのは、戦略として悪手というしかありません。
逆に言えば、需要に対して供給量の少ないスキルや知識は、労働市場で非常に高い価値を持つことになります。その典型が、現在の世界で起きている「AI関連人材の報酬の暴騰」という状況です。なぜAI関連人材の報酬水準がここまで上がっているかというと、需要に対して圧倒的に供給量が足りていないからです。
ではなぜ、AI人材の供給量は足りていないのでしょうか?
理由は単純で「まったく人気がなかったから」です。1980年代の第二次AIブームが去った後、1990年代の「AIの冬の時代」において、人工知能に関する研究は下火になり、関連する学位を取る学生も激減したことから、人材の供給量が大幅に細ったところへ、現在も進行しているAI第三次ブームがやってきたことで、需要に対して供給が大幅に不足する状況が生まれたのです。
これは株式市場における投資と同じことです。人気になっている銘柄の株価は上がりますが、こういった銘柄に手を出せば当然ながら「高値掴み」のリスクは高まります。これを敷衍していえば、知識やスキルなどの人的資本に関しては、流行しているテーマに手を伸ばすよりも、むしろ積極的に逆バリすることが求められる、とも言えるでしょう。