2024年1月1日に発生した能登半島地震から1年が経った。南海トラフ地震や首都直下地震など巨大地震の脅威も去らぬ中、断片的な防災知識ではなく最先端の科学技術や専門家の知見に基づいた正しい防災知識を身につけたいと考える人も多いのではないだろうか。
本記事では、池上彰総監修『いのちをまもる図鑑』(ダイヤモンド社)で第2章「自然・災害からいのちを守る」の監修を務めた危機管理の専門家・国崎信江氏に「アップデートすべき防災知識」を聞いた。
家で過ごす時間が増える年始、防災対策を見直してみては?(取材・構成/杉本透子)
避難所ではひとりにならないのが基本
――地震が起きた際、避難所で性犯罪や盗難が発生することが問題になっています。もし被災して避難所で過ごすことになったら、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。
国崎信江氏(以下、国崎):『いのちをまもる図鑑』にも書きましたが、避難所ではひとりで行動しないことが一番です。単独でいると犯罪のターゲットになりやすいので、トイレに行くにしても誰かと一緒に行くということですね。例えば若い女性がひとりで避難所に行くなら、同じようにひとりでいる女性に声を掛けるといいと思います。「おひとりですか? 私もひとりでちょっと不安なので一緒に行動しませんか?」というふうに、積極的に声をかけましょう。
避難所では「ポケットのある上着」が必須アイテム
――それはいいですね。盗難に関しては、どう対策するとよいでしょうか。
国崎:避難所に行くときにジッパー付きのポケットのある上着を着ておくとよいと思います。冬ならポケットの多いダウンやコート、夏なら薄手のベストなど。内ポケットがあるものが一番いいです。貴重品を入れておけるので。
上着があれば、寝るときに貴重品の入ったショルダーバッグを肩にかけたり、リュックサックを体の前にして腕に通すなどした上から、羽織って前をとめることができます。こうするとバッグが常に体に触れている状態になり、大事なものが盗まれにくくなります。
ふだん使いできるポケットアイテムを探してみて
――以前、SNSで「女性向けの服はポケットが少ない・小さい」ということが話題になっていました。災害時にもポケットの有無が大事なんですね。
国崎:普段から内ポケットのついた服や、容量の大きなポケットのある服があるといいですよね。あるいはそれを補助する・代替する形で、体に密着する小さなバッグなどを用意しておくか。
私が作った「エマージェンシーベスト」はまさに被災時に「着て逃げる」ために作ったものですが、ポケットが多いという理由なのか、たくさん注文をいただいて在庫が少なくなっています。普段から着れるデザインで、背中のポケットにはノートPCも入るのでカバンをもたずに通えると大学生にも注文していただいているようです。
拡大画像表示
――防災リュックの代わりに多機能ベストを置いておくのもいいですね。
国崎:そうですね。アウトドアメーカーが山登り用として販売しているベストなどもジッパー付きのポケットがたくさんあってよいと思います。普段使いできるデザインでひとつ選び持っておくと、日常でも使えていざというときにも役立つと思いますよ。
※本稿は、『いのちをまもる図鑑』についての書き下ろしインタビュー記事です。
国崎信江(くにざき・のぶえ)
危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表
女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。国や自治体の防災関連の委員を歴任。『10才からの防犯・防災』(永岡書店)や『おまもりえほん』(日本図書センター)などの監修もつとめる。