1万件以上の片づけに向き合ってきたプロが見つけたのは、「ゴミ屋敷」と「モノ屋敷」の2つの散らかり傾向である。「ゴミ屋敷」「モノ屋敷」それぞれ、そうなってしまった「理由」があり、決して「だらしない」や「怠けている」からではないとプロは話す。
そこで登録者数16万人の人気YouTube「イーブイ片付けチャンネル」の運営者であり、書籍『1万軒以上片づけたプロが伝えたい 捨てるコツ』の著者・二見文直氏に、「ゴミ屋敷」と「モノ屋敷」それぞれの特徴と、そうなってしまった理由について解説。片づけに悩むあなたにも、新しい発見があるかもしれない。(構成/ダイヤモンド社・和田史子)
片づけられないのには「理由」がある
これまで1万件以上の「片づけられない」悩みに向き合ってきました。僕たちは依頼者さんや相談者に対し、できるだけじっくりお話をお伺いするようにしています。その中で、「片づけられない」のは、だらしがないからとか怠け者だからでは決してないということに気づきました。そういう状況に陥ってしまった「理由」があったのです。
理由はさまざま、一人ひとり違うものではありますが、大きく分類すると見えてくるものがあります。片づけられなくなってしまった理由と実際の片づけの現場の様子を分析すると、2つの傾向があることに気づいたのです。
それは、男性はゴミ屋敷になりやすく、女性はモノ屋敷になりやすいということです。
それぞれ説明しましょう。
ゴミ屋敷は「激務」「コロナ」で急増
いわゆるゴミ屋敷は、その名のとおりゴミだらけのお家です。
ペットボトルや缶が山積み、食べかけのお弁当やコンビニの袋があちこちに置いてあり、食事に関してはデリバリーを利用されている方が多く、ピザや宅配弁当の箱なども散乱していたりします。最悪だと腐敗臭やゴキブリ、虫などがわいてきてしまい、衛生的にも良くありません。住んでいる方の健康のためにも、急ぎ片づける必要があります。
このようなゴミ屋敷は、1日でなるわけではありません。きっかけとなる出来事があります。
依頼者さんや相談者さんからよく聞くのは、
「急に仕事が忙しくなった」
「コロナで外出できなくなった」
の2つです。
仕事が忙しくなったというのは、例えば転職先が夜勤で、生活サイクルとゴミ収集のタイミングが合わなくなったとか、部署異動で残業続きになってしまったとか。家に帰ったら倒れ込んでしまい何もできなくなってしまったといった具合に、大きな環境の変化がきっかけだったりします。
また、人間関係のトラブルもきっかけとして多いです。
ストレスがたまってしまい、帰宅後動けなくなってしまい、食事はかろうじて宅配を利用してとったものの、そのほかの家のことができなくなってしまったという話もよく聞きます。いずれにしても激務にある方からのご依頼が多い印象です。ひとり暮らしの男性によく見られます。
ほかにも、うつ状態になってしまったことなどから、動けなくなってゴミ屋敷になってしまったという方もいらっしゃいます。
会社を辞めて外出しなくなり、家ではスマホゲームや動画を見るだけ。だんだん外出もおっくうになり、昼夜逆転の生活が続き、やがてゴミ捨ても面倒になり…。過食や拒食を繰り返し、不眠も続いてしまい、病院に行ったらうつと診断されたという方もいらっしゃいます。
そういったお話を伺うたびに、「大変ななか、食事だけでもとってくれて本当によかった」と心から思います。片づけは僕たちプロに任せていただければいいですが、命はご自身で守るしかありませんから。うつ状態の方は女性もいらっしゃいます。
モノ屋敷は「趣味」や「お付き合い」も影響
一方、やたらとモノが多いのは、女性の方のほうが多い印象です(冒頭の写真のイメージ)。散らかっているというよりも、モノがあちこに置いてあったり、収納がはみ出したり、床やベッド、ソファやテーブルなど、ありとあらゆる場所にモノが積み上がっているのが特徴です。
いわゆるモノ屋敷で多いのは、推し活などの趣味、それもひとつではなく複数の趣味や推しを持つ方です。今推している方のグッズであれば、数が多くてもきれいに並べていたり、大事に保管したりしているので、ほとんどの場合は問題ありません。ただ、過去の推し活グッズや今はやっていない趣味の道具、ホコリをかぶっている資格試験や勉強の本・テキストなどは、一気に処分することも検討したほうがよさそうです。
いずれにしても、こういうタイプのモノが多い方は、好奇心が旺盛で勉強熱心なのが特徴です。
また、テレビ通販やネットショッピングをよく利用する方。買い物好きの方はモノが多くなりがちです。こういう人は、洋服が趣味でクローゼットに服がズラリ並んでいる方とは違います。
思いつきや勢いでモノを買ってしまいがちなので、置いてあるモノの統一感がなく、なかにはダンボールを開けないまま廊下に放置という方も。モノが多い割にそこまでモノに執着がないため、こういうお宅の片づけは比較的スムーズに進みます。
テレビ通販やネットショッピングが好きな方は、先ほどのゴミ屋敷のケースと同じく、夜勤の方や激務の方が「ショッピングでストレス解消」という意味合いで利用していることが多い。なので買い物をした時点でお役目終了という考え方もできます。
次回以降は、ネットショッピングはカートにいったん入れてほったらかしましょう。精算せずに翌朝チェック。本当に欲しかったモノかどうか冷静に判断することで、ムダな買い物を未然に防げます。
やたらモノが多いお宅にあるもの
株式会社ウインドクリエイティブ代表取締役。YouTubeチャンネル「イーブイ片付けチャンネル」運営者。一般社団法人遺品整理士認定協会認定遺品整理士。生前整理技能Pro1級。月平均130軒以上のお宅を訪問し、これまで1万件以上の片づけを経験。年間約5000件以上の相談を受け、のべ4万件を超える全国からの「片づけられない」悩みと向き合ってきた。2016年にスタートしたYouTube「イーブイ片付けチャンネル」は、登録者数16万人、総再生数7500万回を突破(2024年12月現在)。『1万軒以上片づけたプロが伝えたい 捨てるコツ』(ダイヤモンド社)は初の著書。
あと意外に多いのは、何というわけではなく全体的にモノが多いお宅です。
・同じモノがいくつもある→ボールペンやハサミ、じゅうたんやフローリングのゴミを取るためのコロコロなど、明らかに「そんなにいらないでしょ」というくらいの数がある
・いわゆる雑貨が多い→100円ショップの「ついで買い」や無料でもらえるグッズなどがあちこちに置いてある
・お土産品やいただきもの→もらいものもそうだが、物産展などで自分で買ったモノも多数ある
・おまとめ品、セット品、おまけ付き、限定品→「お得」「特別」に弱いため、使わないモノも買ってしまう
・おつき合い品→お土産のほかに、友達にすすめられたものや、友達にいつかあげようと思って買ったモノなど(あげる機会を失ってそのままになっているケースも多い)
みなさんも心当たりはありますでしょうか? 100円ショップに行くと、男性は滞在時間も短く必要なものを1つ2つ持ってレジに向かいがちですが、女性は「ついでに」と本来の目的意外のグッズも買ってしまう傾向があるようです(個人差はありますが、依頼者さんや相談者から伺った話を書いています)。
買い物で見えてくる「違い」
例えば、お父さんが家族から「牛乳と卵を買ってきて」と頼まれたとします。買ってきたものを見て…
(母)「え、これだけ? 缶ビールは1本だけ? お父さんは気が利かない!」
(父)「ビールは俺しか飲まないし、ちゃんと言われた通り買ってきたのに…」
こんなすれ違い、経験ありませんか?
お父さんは頼まれたものと自分が欲しいもの、それも自分1人分しか買いませんが、お母さんは安いものや家族が喜びそうなものがあれば、気を利かせて人数分買ってきます。この話で言えば、缶ビールのほかにお茶やジュースも買ってくるのがお母さんです。
モノ屋敷になりがちな方は、周りの人への配慮ができる人、心優しい人が多いですね。「感じのいい店員さんにすすめられると何でも買ってしまう」という人もいました。優しさが行き過ぎてしまうと、モノ屋敷になってしまうこともあるのです。
心優しい人は「まだ使えるのにもったいない」と思ってしまい、捨てるのが苦手なタイプかもしれません。そうなるとますます家にモノが増えて、モノ屋敷になりがちです。
以前の記事で紹介したとおり、心優しいモノ屋敷タイプの方は、人を招待すると片づけに一気に火がつくことがあります。自分のために片づけるのは面倒だけれど、人を喜ばせるために気持ちのいい空間を作ろうと思うとやる気も出ます。
こんなふうに家にあるものを眺めてみると、意外な発見があるかもしれません。