建築費の高騰で新築価格が上がり
郊外の新築物件が販売不振に?
こうなると、マンション価格の先高感から購入に走った「にわか投資家」のマインドに変化が見られるかもしれない。そうなった場合には、都心でも売れ行きが悪化する可能性が出てくる。
この前提から、新築マンションの供給動向を予想してみよう。デベロッパーからしたら、建築費の高騰から新築価格が上がるのは必至で、郊外の物件は販売不振に陥る可能性が出てきている。
なぜなら都心寄りの物件は広域に集客できるが、郊外の物件はその周辺しか集客できないからだ。筆者が主宰する無料会員制のマンション情報サイト「住まいサーフィン」は31万人の会員がどの物件を検討していたかが分かる。
郊外に行けば行くほど、集客範囲は狭くなり、年間に顕在化する顧客数が100世帯の場所に300戸の供給をしたら、売り切るまでに実際3年かかるものだ。価格の高騰で居住地を郊外に移転する世帯はそれほど多くない。
こうして、郊外の新築物件は販売が長期化することになる。売れ行きが悪いと次の物件を供給する時期が遅れる。2025年の新築供給は2万戸割れする可能性すらある。そうなると、2000年に記録した9万5635戸の販売戸数の8割減まで落ち込むことになる。
新築の売れ行きが悪かろうが、新築価格は上がる一方になる。大手ゼネコンが営業赤字になるほど建築費が急騰している中で、原価が高いものを安く売ることなどできるはずがないからだ。
それに、大量供給している訳ではないことに加え、大手寡占が進んできた市場では売主が値引く可能性は非常に低い。だからこそ売れ行きが悪い分、供給戸数は売れ行きに準じて減ることになる。
最後に、失敗しにくいマンション購入の戦略を伝えておこう。失敗とは買ってから値下がりするか、売れなくなることを指す。
稀少性すら出てきた新築ではあるが、竣工から1年経過すれば中古市場に出て来る。中古市場の中では、各物件の立地を比較し、価格を判断することになる。同じ最寄り駅の物件が2つあった時に、徒歩1分の築10年物件と徒歩10分の築1年では、毎年の値下がり率は前者の方が下がりにくい。単純に、築年よりも立地の方が資産性に強く影響するということだ。
マンションは1に立地、2に立地である。新築も同じことなので、周辺の中古物件と比較して判断しよう。それが失敗しない近道になるのだ。
(スタイルアクト代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)