「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』。「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集します。
見逃されがちだけど、重要な「性格」とは?
人生の経営戦略=ライフ・マネジメント・ストラテジーにおいて、「素直さ」というのは、見過ごされてしまいがちな性格特性です。
これまで長らく人材育成・経営者育成に関わってきた立場から、「伸びる人」に共通する特徴は「素直さ」だと思っています。逆に言えば、伸びない人、現場の「お山の大将」で終わってしまう人の特徴は「頑固」ということです。自分のこれまでのやり方に拘泥して、なかなか新しいやり方・考え方を受け入れようとしなければ、成長はそこで止まってしまいます。
中学生の王貞治を発掘して早稲田実業高校から読売ジャイアンツ入団へのルートを手引きし、のちに一本足打法を完成させたコーチの荒川博は、たまたま隅田川河川敷で見ていた試合中に、兄の真似をして右打ちしていた中学生の王に「左打ちで打ってごらん」とアドバイスしたところ、即座に「はい」と答え、それで痛烈な二塁打を放ったのを見て、その「素直さ」に感心して「この子は伸びる」と直感したというエピソードを語っています。
コーチングの現場では「コーチャビリティ」と言われる概念ですが、実は学習と成長においては、この「素直さ」が非常に重要な要件となります。なぜなら、私たちの学習は「意識を変えること」で発動するのではなく、まず「行動を変えること」で発動することがしばしばあるからです。
私たちは一般に、「意識を変え、そのあとで行動が変わる」と考えてしまいがちです。しかし、私たちの脳は非常に保守的にできていて、なかなか「意識を変える」ことができません。意識が変わらなければ、当然に行動は変わりません。行動が変わらなければ、結果も変わらず、そして人生も変わりません。
この「意識の保守性」を乗り超えるために、難しい「意識を変える」ことをせずに、まず「行動を変える」ことからやってみる。行動が適切に変われば、結果も変わります。