半導体の重要性は近年増すばかりですが、大量の半導体を必要とする生成AIの普及により、政治的にも経済的にも一層の注目を集めることになりました。一個人にとっても、今や半導体についての知識はビジネスや投資で成功するために欠かせないものとなっています。
この連載では、今年1月に新たに発売された『新・半導体産業のすべて』の一部を抜粋・編集し、「3分でわかる世界の半導体企業」をコンセプトに紹介していきます。今回は、世界半導体製造装置の売上高で1位に返り咲き、日本での存在感も増している「ASML」ついて解説します。
売上・開発はともに良好で日本での存在感も上昇中
売上高 275億5800万ドル(2023年)
従業員 3万9086名
ASMLはオランダのフェルトホーヘンに本部を置く半導体製造装置メーカーです。1984年にオランダのフィリップスとASMインターナショナルが50%ずつ出資した合弁会社(ASM Lithography)としてスタートし、1988年にそこからスピンアウトして、ASML(LithographyをLに省略)となりました。
半導体を微細化する上で中核となる露光機(マスクパターンをウエハー上に転写する装置)で圧倒的な存在感を示し、日本のニコン、キヤノンを大きく引き離しています。KrFステッパーで65%、ArF液浸ステッパーで97%、EUV(極端紫外線)ステッパーに至っては100%の世界シェアを誇っています。
2023年度の世界半導体製造装置の売上高では、アメリカのAMATやラムリサーチを抑え、トップに返り咲いています。2024年の第2四半期の決算では、売上62.4億ユーロ(1兆円)、粗利益率が51.5%と明るい結果を出しています。
ASMLのEUV露光機は、2024年12月18日に日本のラピダスのパイロットラインへの導入記念式が行われました。また2025年にはマイクロンの広島工場にも、さらに熊本のJSAM第2工場にも導入される予定です。
高NA EUV露光機(NA(開口数)=0.55)の試作機はインテルに納入されたばかりですが、2024年6月には第2号機をTSMCへ出荷するとアナウンスしています。
このインテルに納入された試作機EXE:500の映像がインテルから公開されましたが、14m×4m×4mで重さ160トンという巨大システムで、驚かされます。将来こんな巨大な装置が何十台も設置された半導体工場をイメージすると、信じ難い気持ちになります。量産機EXE:5200は2025~2026年に出荷予定で、すでにインテルが発注しているようです。
2024年6月には、IMECイベントでNA=0.75のハイパーNA EUV装置の発表があり、2030年には登場すると思われます。
ASMLは韓国サムスンとも次世代EUV装置のR&Dファブを共同で設立し、ラピダスやマイクロンの広島工場へのEUV露光機の導入に先立って日本法人の人員を2026年までに600名増員すると発表しています。