2位ベオグラード(セルビア)
シベリア上空の通過が可能か
2位は欧州セルビアの首都・ベオグラードだ。セルビアというと、2000年代まで続いたユーゴスラビア内戦のイメージが強く、あまり良い印象を持たない人が多いかもしれない。
しかし近年は政情が安定したこと、古代の遺跡や中世の街並みなど観光スポットが充実していること、また意外にもクラブ(ディスコ)が盛んでナイトライフ(夜遊び)も注目されていることなどから観光客が増えている。
24年10月開催の「日本・セルビアビジネスフォーラム」では、セルビア大統領が「国営航空会社のエア・セルビアが6カ月以内にベオグラード~東京の直行便就航を目指す」と発言。実際、エア・セルビアは中国や米国などへの直行便を次々と開設している。
ウクライナ戦争が長引く中、セルビアはロシアへの経済制裁に参加していないため、他の航空会社では不可能になったシベリア上空を通過できるのが最大の特徴だ。
ただし、24年12月にアゼルバイジャン航空の墜落事故が起きたことから、シベリア上空通過の実現可能性が不透明となった。なお、中欧・東欧では他にクロアチアやチェコなどが日本発着便の開設を検討している。今はLOTポーランド航空による成田~ワルシャワ線のみだが、これから増えていくことに期待したい。
3位マイアミ(米国フロリダ州)
JAL&アメリカンに期待
3位は、米国フロリダ州のマイアミだ。温暖なリゾート地で、都市圏人口は約600万人、ハリウッドスターを含め富裕層も多く居住している。イチロー選手がメジャー3000安打を達成した際に所属していたマイアミ・マーリンズの本拠地としても知る人も多いだろう。マーリンズのスタジアムは23年のWBC決勝の会場で、「侍ジャパン」が世界一に輝いた場所でもある。
土地柄、キューバ系など中南米からの移民が多いのも特徴で、マイアミ国際空港には100以上のエアラインが乗り入れ、1日400便以上が発着している。主力会社の一つ、アメリカン航空も多くの路線を運航しているが、アジア便がないのが課題で誘致が進められている。
とりわけアメリカン航空が加盟する航空連合・ワンワールドのメンバーである日本航空への期待は強く、「JALの次の新しい就航地はどこか?」といった話題が出るたびに候補となる場所だ。
JALは1月21日、25年の運航計画の中で、5月31日から成田~シカゴ線を開設すると発表した。共同事業パートナーであるアメリカン航空とのコードシェア便だ。ただし、シカゴ線は昔あった路線の再開なので新鮮味はなく正直、無難というのが筆者の感想だ。
マイアミ線開設について慎重な姿勢を崩していない理由の一因に、距離の問題があるだろう。東京~マイアミは約1万2000km離れていて、これはJALの最長距離路線であるニューヨーク線はもとより、日本の航空会社で最長となるANAの成田~メキシコシティ線(1万1247km)よりも長い。ロングフライトは燃料費や人件費などのコスト負担が大きい。
また、中南米への乗り継ぎ拠点の意味では、アメリカン航空の最大拠点でありJALも就航済みのダラスと被ってしまうことも挙げられる。
とはいえマイアミからはインバウンドの富裕層の利用が期待できるうえ、日本人旅客に関しても直行便ができればカリブ海地域を含めた観光需要もそれなりにあると思われる。また、
JALは25年の運航計画を発表したものの、国際線の下期路線便数計画については再考の余地がある。航空ファンからすると、ANAを上回る最長路線の誕生は、リスクを取ってチャレンジする姿勢を問う路線とも考えられる。
JALはパイロットの飲酒不祥事が度々取り沙汰されるなど、オペレーションやリソースの問題も指摘されており、運航に余裕があるのかが焦点になるだろう。一方で、ANAに比べるとあまりにもネットワークが不足している以上、路線を拡充してほしいものだ。