が、その出直し会見も失敗したと言わざるを得ません。今後確実に言えるのは、第三者委員会の調査では相談役である日枝氏が対象となり、彼の影響力の排除を求める結論が出てくる可能性が高いことです。27年にわたり独裁を続け、お気に入りだけ出世させて、ちょっとでも嫌いになると左遷する――。この負の連鎖は、あれだけ元気で、テレビの面白さを世間に印象づけていたフジテレビを、視聴率4位のテレビ局に凋落させてしまいました。

 しかし、日枝氏はまだ「自分がいないとこの会社はもたない」と考えているようです。だからこそ、記者会見にも社員説明会にも、出直し会見にも登場しません。1回目の記者会見で「日弁連のガイドラインに沿った第三者委員会設置」案もあったのに、反対したのが日枝氏だったと報じられています。それは、第三者委員会の結論として自身の引退勧告が出されれば、有無を言わさず従わなければならないからだと私は想像します。 

日枝氏は自身の存在感を信じている?
フジテレビを待ち受ける「茨の道」

 いや、それだけではありません。世間の非難を受けて、「第三者の弁護士を含む調査委員会」案をすぐに「第三者委員会」案に変更しました。主要な弁護士を中心に大人数が関わり3月末までに結論を出すという、厳しい日程です。この第三者委員会に入るメンバーへの依頼はいつ、誰がしたのか。出直し会見でも疑問は出ていましたが、回答は曖昧なものでした。

 しかし、これから2カ月間の予定を急に空けて、大量の若手弁護士まで投入する案件は、大きな弁護士事務所でも簡単に引き受けられる仕事ではありません。さらに、ジャニーズ問題のときは、調査委員会のメンバーに精神科医が入っていましたが、フジテレビでは精神疾患を発症した被害女性の問題も扱うはずなのに、リードするのは弁護士のみ。私は最初からこの委員会を、日枝氏の意を汲んだものとして用意されていたのではないかという疑惑さえ感じます。

 フジテレビは本当に“再生”に向けて始動できるのでしょうか。

(元週刊文春・月刊文藝春秋編集長 木俣正剛)