アルツハイマー型認知症だと
最近のことを覚えられない理由
海馬は、記憶を短期的にとどめておく場所で、視覚・聴覚・嗅覚・触覚の情報が統合されています。大脳皮質の内側にある海馬は大脳皮質から独立してはいません。
人間なら6カ月~2年、マウスなら3~4週間の間、記憶は海馬にとどめおかれます。海馬を切除すると、それぞれ直近のこの期間の記憶が思い出せなくなります。
そして、海馬の隣に位置しているのが「扁桃体」です。直径1センチメートル程度で扁桃体という名称はアーモンドの形に似ているため、アーモンドの和名の扁桃に由来しています。


井ノ口馨 著
目や耳からの情報が、感覚野などを経由し処理され、統合されたイメージとして海馬に届き、そして扁桃体に送られます。扁桃体は、その情報を過去の記憶と照らし合わせて、どう感じるべきかを評価します。喜怒哀楽や快不快といった感情的な動き(情動)と扁桃体は深くかかわっています。
海馬は記憶の形成や空間認識を担当し、扁桃体は感情の処理や反応を担当します。
海馬と扁桃体は密接に連携して、感情的な出来事の記憶を強化することで、重要な経験をより鮮明に覚える手助けをします。
アルツハイマー型認知症では、昔のことは覚えているのに最近のことは覚えられないという症状が見られますが、それはアルツハイマー型認知症の患者さんでは海馬が最初に萎縮してしまうためだと考えられています。