70歳以上の経営者が
54.6%を占める診療所業界
全国の診療所経営者(年齢の判明している1万836人)の年齢分布について帝国データバンクが調べたところ、「70代」の構成比が42.1%で最も多く、「60代」(33.7%)、「80歳以上」(12.5%)が続き、70歳以上の経営者が全体の54.6%と過半数を占めた。一方、50歳未満はわずか2.4%。歯科医院と比べてもいかに深刻な高齢化であるかが分かる。
また、日本医師会が全国の病院・診療所に行った「医業承継実態調査」(2020年)によると、診療所の50.8%が「現段階で後継者候補はいない」と回答した。つまり今後、時間の経過とともに健康上の問題や死去によって診療できなくなる経営者(院長)が増加し続ける中、後継者がいない事業者は次々と休業、廃業、解散の状態になってしまうことになる。
こうした状況に伴い、M&Aの動きがより活発になることも予想されるが、スムーズに進めることはなかなか難しいだろう。大きな理由として、診療所は病院と違い「患者が院長先生に付く」ことが挙げられる。コンサルが連れてきた買い手候補の経営者がたとえ優秀な医者であったとしても、前経営者の思いや方針、地域性などをしっかり理解して、それをある程度引き継ぐ気持ちが無ければ、受診者数を維持していくことは難しいのではなかろうか。
さらに診療所業界の競争は年々激化している。厚生労働省によると、2014年以降(2024年まで)の各医療機関の施設数増減は、「病院」が438施設減少、「歯科医院」が2116施設減少したのに対し、「診療所」は4594施設も増加した。また、2024年6月現在の診療所の施設数(事業者数ではない)は10万5346施設で病院(8068施設)、歯科医院(6万6689施設)よりもはるかに多く、コンビニと比べると1.9倍の数になっている。
こうした厳しい経営環境は、経営者に早期廃業を決断させる要因になっている可能性もある。