電動化必須の2030年代、本格四駆市場はどうなる?

 では、技術面でジムニー ノマドを見てみよう。

 基本骨格は、ジムニーおよびジムニーシエラと同じ井形(いがた)またははしご型と呼ばれるトラックやバスでも採用されるラダーフレームだ。ホイールベースが伸びたことで、車体中央にセンタークロスメンバーを加えて車体剛性を上げた。

 凹凸路でも優れた接地性と地面に対するクリアランス(距離)が大きくできる3リンクリジットアクスル式サスペンションも3ドア車と同じだが、車重が増えてボディサイズが違うため、バネやショックアブソーバーの仕様は当然違う。

 排気量1.5L直列4気筒ガソリンエンジン、そして通常は後輪駆動でトランスファーを介して4H(4WD高速)または4L(4WD低速)を選べる駆動システムも、ジムニー シエラと共通だ。

 ジムニー ノマドは、ファミリー層も取り込みたいという商品企画戦略車だが、燃費はWLTCモードでマニュラルトランスミッション車が14.9km/Lで、AT車で13.6km/Lとこのクラスの車としてはけっして良い数字ではない。

 そうなると、電動化を求める声が出てくるのは当然だろう。

 20年代後半から30年代に登場するであろう5代目ジムニーのハイブリッド化については24年7月、スズキが開いた技術説明会でエンジン開発幹部が「メカニカル四駆でのマイルドハイブリッド化、またはプロペラシャフトがないエンジン+モーターの組み合わせなど議論を始めたところ」と明言している。

 今回の会見では、将来の電動化について鈴木社長や開発担当者からコメントはなかった。

 その上で、鈴木社長は「本格四駆のプロユースとして頻繁にフルモデルチェンジするのではない。基本性能の中で作り込むモデル」「初代ジムニーと比べると、乗り心地は乗用車ライクになったが、あくまでもプロユースというポジショニングはずらさない。その中で、本来の機能を研ぎ澄ましていく」と、ジムニー ノマドを含めて国内ジムニー3モデルの将来のあり方を示した。

 一般的にプロユースでの本格四駆といえば、「ランドクルーザー70」、そして軽自動車ジムニーがある。

24年末、雪の山形で長距離テストしたトヨタ「ランドクルーザー 70」24年末、雪の山形で長距離テストしたトヨタ「ランドクルーザー 70」 Photo by K.M.

 一方で、先進的な四駆といえば、直近では2000万円台後半と高額ながらメルセデスベンツ「G580」の優れた機能性が自動車開発者の間で話題に上ることが多い。バッテリーEV(電気自動車)でありながら、深い水の中での走行を可能とし、また荒れた急斜面での姿勢制御に優れ、走り味がマイルドだと感じることに驚く。

 その他、中国車を含めて電動四駆車の技術進化が日々進んでおり、従来の本格四駆の概念が30年代には変わっているかもしれない。

 法規制を含めて電動化が避けられない状況で、ジムニーの電動化は必然だ。

 一方で、ジムニー ノマドを含めた日本向けの長納期という課題を同時に解決していかなければならない。

 スズキの『次の一手』に期待したい。