そして1975年4月5日、いよいよレギュラー放送がスタート。タイトルは『萩本欽一ショー 欽ちゃんのドンとやってみよう!』。開始時点では「欽ちゃんの~」に加えて「萩本欽一ショー」もついていた。コメディアンの名前がついた初めての番組ということで、常田久仁子がご祝儀として1つ余分に足してくれたのである(前掲『なんでそーなるの!』170~171頁)。
スタジオでハガキを読むだけでなく
外に飛び出して素人と絡む
『欽ちゃんのドンとやってみよう!』のメインは、繰り返すまでもなく視聴者から寄せられたハガキを読むコーナーである。アシスタントとして、まだデビュー間もない香坂みゆきが出演していた。
ハガキのテーマは、「母と子の会話」「ああ勘違い」「レコード大作戦」など基本的にラジオの『欽ドン!』から受け継がれた。「母と子の会話」は、先ほど見た通り。「ああ勘違い」は母と子に限らず店員と客などさまざまなシチュエーションでの同じ会話ネタ、「レコード大作戦」は、流行歌のワンフレーズをオチに使ったネタ、といった具合だ。
これを欽ちゃんが読み、スタジオに来た観覧客の笑いを見て「ばかウケ」「ややウケ」「ドッチラケ」と書かれた3つの箱にその場で振り分けていく。最後に「ばかウケ」をとったハガキのなかから欽ドン賞が決まる。
ここまでは、ラジオ番組をテレビでやるというコンセプトがそのまま表現されている。だが素人が主役だったのは、投稿ハガキだけではなかった。
たとえば、欽ちゃんがスタジオの外に出て、街頭で一般の素人に向けて投稿ハガキを読む。欽ちゃんが、「ちょっと聞いて」と言いながらハガキを手に持って投稿を読み上げ、相手の反応を見る。
ラジオだと、スタジオ内にいるタレントや放送作家、またテレビスタジオの観客も若者が多い。だが萩本は、中高年の人たちにも声をかけて、ハガキを読む。なかには意味がわからず頓珍漢な反応をするひとや無反応なひともいる。しかしそれが逆に予想外で面白い。
素人との絡みはこれだけではない。街行くひとを捕まえて、番組のタイトルコールをさせることもあった。欽ちゃんが「あそこにカメラあるから」と指さして、そこに向かって「欽ちゃんのドンとやってみよう!」と叫ぶようお願いをする。