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全面的に信用できる人は存在しない
人間関係で大きなトラブルに巻き込まれる人の多くは、その前の段階で漠然と「この人は全面的に信用できる」と思い込んでしまっていることがよくあります。しかし、実際には、全面的に信用できる人など存在しません。
全面的に信用するためには、その人のことをすべて把握し、すべてコントロールできることが前提になりますが、そんなことは現実的に不可能です。他人である以上、相手には相手の立場や利益があり、気持ちや考え方も変化します。
そうした現実を無視して「この人なら大丈夫」と全面的に信用してしまうと、後で痛い目を見ることになるのです。
信用しすぎることのリスク
「全面的に信用します」と相手に伝えること自体は、コミュニケーションの手段としてはアリかもしれません。しかし、本当にそう思い込んでしまうのは危険です。
信用しきっていることを相手に見せてしまうと、自分が無防備な状態になってしまいます。例えば、無防備なニワトリが地面に寝転がっていると、それを見た捕食動物はどうするでしょうか。当然、狙われてしまいますよね。それと同じで、「私はあなたを全面的に信用します」と相手に伝えてしまうと、それを利用しようとする人が現れる可能性があるのです。
また、人は本能的に「全面的に信用される」ことに違和感を覚えます。「この人は何も疑わずに自分を信用している」という状況に対して、無意識のうちに負担を感じたり、逆に利用しようとする気持ちが芽生えてしまうこともあります。全面的な信用が、相手の中に「試してみよう」「ちょっとズルをしてもバレないかも」といった気持ちを生み出すことすらあるのです。
信用は慎重に、でも信頼関係は築く
「全面的に信用するのは危険」と言うと、「じゃあ誰も信用しちゃいけないの?」と極端に考える人もいるかもしれません。しかし、それは違います。人を信用しないのではなく、自分の責任でしっかりと確認し、適切な距離感を保ちながら信頼関係を築くことが大切なのです。
本当に信頼される人というのは、「全面的に信用することはできない」と理解している人です。きちんと相手をチェックしながら、自分の責任で行動できる人こそ、結果的に周囲から信頼されるのです。逆に、「私はあなたを全面的に信用します」と無防備にさらけ出してしまうと、「この人は判断力がないのかも」と思われ、結果的に信頼を失ってしまうこともあります。
自分のオールは自分で握る
人間関係において大事なのは、「自分のことは自分で責任を持つ」という姿勢です。すべてを他人に任せてしまうのではなく、「ここは任せるけれど、最終的な判断は自分がする」というスタンスを持つことが大切です。
中島みゆきさんの歌にも「自分のオールは自分で握れ」という主旨のメッセージがありますが、まさにその通りです。人を信用することと、自分の人生を他人に委ねることは違います。信用はするけれど、最終的には自分がしっかりとコントロールする。それが、健全な人間関係を築くための基本なのではないでしょうか。
※本稿は『精神科医Tomyが教える 50代を上手に生きる言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。